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アジアに魅せられて(おにぎりパクリ)
第3回 本社の使い走りになるな!
昨今日本企業の海外進出が叫ばれていますが、
この現地での経営スタンスにおいて、一般的な
日本企業は幾つか解決すべき課題があると個人
的には感じています。
具体的な課題は、利益の配分、意思決定の正確性
・迅速化及び従業員の育成です。
先のコラムで紹介した「日僑の時代」では、
以下の文章があります。
「日本のように世界一の所得水準を誇るようになった
国の人が、自国で物を作ることが出来なくなって外国
に出稼ぎに行く時代になった。必要に迫られてよその
国に投資して作られた企業は、あと何年かたって所期
の利益を上げたら工場を取っ払って引き上げてくる
つもりの企業ではない。計画通りに業績をあげられる
ようになったら更に拡張して現地に根を下ろす性質の
ものである。オリジンが外国資本であっても現地に設立
され現地人を使って現地で利益を上げ、現地の税法に
従って税金を納める以上、会社はその国の会社であって
日本の会社ではない。少なくとも現地に作った企業は
二重国籍であるという認識が必要である。そうした意識
とそれに伴う配慮がなかったら、かつての帝国主義時代
の侵略となんら異なるところがないから、とても地元に
定着することは出来ないだろう。」
私が、現地で仕事をしている中で意識していたことの一つ
に、稼いだ利益を日本に持ち帰ることでした。これはプロ
ジェクトが終了すると別の国に移動することがエンジニア
リング業や建設業では良く見られます。しかし、この行動
は優秀な現地社員に取ってみれば本来現地で儲けた利益は
現地で再投資するのが一般的で納得できる話ではありません。
現地に利益を還元させなければ、従業員の給料UP、投資に
繋がりませんし、その企業が現地に根付くことが出来ません。
また、意思決定機関が現地の従業員を思いやり、一度拡大した
事業の存続をどこまで真剣に考えられるかが重要です。特に
日本と異なる商習慣のある現地の難しい課題にさらされると
その国での事業から身を引くことを選択してしまいがちです。
また、現地では日々交渉の機会があっても、本社にお伺いを
立てる分、意思決定が遅れ、交渉先から見くびられるきらい
があります。
更に、従業員育成の観点で考えた場合、利益の配分、事業の拡大
を図らなければ優秀な従業員の確保に繋がりません。また優秀な
従業員をとっても、自社の幹部にまで育てる体制を整えていない
ことため、途中で辞めてしまうことがおきます。
現地に派遣される駐在員は、日本本社の利益代表であると共に、
現地の利益代表にもなる、この点を常に意識し、長年にわたって
現地で勤め上げなければとても現地の進出先企業として評判を
得られません。
今後ますます企業が海外に出て行くにあたって、 如何に現地を
大切に考えていくかが企業の重要な課題の一つだと思います。
2011/01/22