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知者不言、言者不知(村上悠悠)

第25回 ヘソクリの引け際(3)

もう一人の例は、60代の方です。
彼は小さな会社を経営してました。
ガンにかかり、入院し治療を受けていました。
彼には自分の病状が
かなり重いという自覚がありました。
考えれば考えるほど、
気持ちは落ち込むばかりです。
手術中に死んでしまって、そのまま、
ということまで想像してしまう。

手術前日、彼は奥さんに言いました。
「実はヘソクリがある。
多分、俺はもう長くはないだろうから、
遣う機会もないだろう。」
と、その所在を打ち明けた。
その額、なんと600万円也。

さて、手術は良好に済み、
10年近く過ぎた現在も
彼は健在です。

奥さんから、一度も600万円に
関する話は出ません。
彼も聞きません。

彼は時々思い出す、
あんなこと打ち明けなきゃ良かった、
なんであんな弱気になっちゃったんだろうなぁ、と。

どちらの例にしても
結局、自分で遣い切ってない、
ということでは同じですね。

貯めたお金を遣い切るということが
たとえヘソクリであっても
実は難しいというのがわかります。

2008/10/27