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知者不言、言者不知(村上悠悠)

第1回 えぇー、生クリームがスーパーに並んでる!

私は、知らないことが多過ぎる、というか、日々ビックリすることばかり、
「へぇー、そうだったのか」と思うことが本当によくあります。

それは30年ほど前のこと、上京して、一番ビックリしたのは、
スーパーマーケットに買い物に行った時、どんな小さな店でも、
例えば板橋区の片隅にある小さなスーパーでも、生クリームが並んでいたことです。

当時の日本の田舎では、
生クリームは3日前に牛乳屋さんに予約しないと手に入りませんでした。

その昔、昭和40年代までのクリスマスケーキはバタークリームばかりでした。

バタークリームと言って、わかってもらえるでしょうか?
今、食べたら、かなり不味いものでしょうが、
その当時はミスタードーナツに挟んであるクリームもバタークリームでした。
(そんな昔の片田舎にもミスドはあったのです!)

そういえば、邱永漢先生のコラムの中に
「中国のケーキは美味しくない」というようなことが書いてありましたが、
あれも、もしかしたらまだバタークリームが主流なのかもしれません。

そんなわけで、当時の田舎では、
生クリームのケーキを食べようとしたら、手作りでした。
そして、作ろうしたら、
3日前に牛乳屋さんに生クリームを予約するところから始まったのです。

だから、上京して、スーパーの乳製品売り場に
ズラッと生クリームが並んでいる光景を見た時には本当に驚きました。

その時は、その驚きを表現する言葉を知りませんでしたが、
つまりは東京にはそれだけの購買力があったということですね。

やっぱり東京はスゴかったのです。

タイトル名「知者不言、言者不知」は、「知る者は言わず、言う者は知らず」です 。

「老子」の56章から、
物事を良く知りぬいている人は、みだりに口に出して言わないが、
よく知らない者はかえって軽々しくしゃべるものである、ということのようです。

知らないことを初めて知って、の連続を、話そうとする私にピッタリな気がします。

2008/01/01