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宝船 巨龍にかける 夢無限大(森綾子)

第5回 原油は高いか安いのか?

「原油価格1バレル60ドル」

繰り返される原油高値更新の報道に、
最近は、もはや驚かなくなってしまいました。
しかし2年以上も前に、
この事態を予測した人はまずいなかったでしょう。
なにしろ当時は
20〜30ドル台をウロウロしていたのですから。

2003年4月のある日、
中国を代表する石油会社の株が急騰し始めました。

中国石油天然気。

原因は、ウォーレン・バフェット氏の大量取得。
現在まで続く石油株高騰の幕開けです。

私がバフェット氏を知ったのはこのときでした。
そして、世界的に著名な株式投資家にして、
優れた銘柄選択・投資手法で
全米2位の資産を築いた人物であることを知ったのです。

バフェット氏の洗練された投資手法のあれこれに
学ぶことは多々ありましたが、
私は特に、次の点に大衝撃を受けたのです。

 「独占的企業を選ぶと有利だ」

当初私は、未来のソニーやホンダを探そうと、
華やかな家電、自動車株を物色する傾向がありました。

しかし、バフェット氏は違います。
なぜなら、家電や自動車は同業他社が多く、
過当競争に陥り、収益が圧迫される危険が大きいためです。
これに対し独占企業は、激しい競争にさらされず、
確実に収益を高めることができるという考え方です。

中国株は玉石混交。しかし
「独占的」でふるいにかければ、
かなり絞り込むことができます。

高速道路、港湾関連は地理的に独占ですし、
石油、電力はエネルギー供給で独占です。
これらの企業に、短期間で「あっ」と驚く成長を期待するのは無理ですが、
発展著しい中国で業績が下がるとは考えにくく、安心です。

バフェット氏の独占的企業を選ぶ手法は、
私にとってはまさに目からウロコ。
なるほどイラク戦争、SARSの暴落時に、
狙った石油株を大量取得した理由もわかろうというものです。

しかし。
疑問はありました。
なぜ石油株なのか?
なぜ電力や高速道路ではないのか?

当時「中国石油天然気」という株は、1.6HKD程度、
配当利回りの良い、せいぜい25円の安株で、
個人的には、可もなく不可もなくという印象でした。

とはいえバフェット氏があえて石油株を選んだからには、
何か理由があるはずです。
そこで、一つ謎解きをしてみようと思った私は、
石油関係の本を探して読み始めたのです。
その結果、浮き彫りにされたことが一つ。

 「中国の成長と石油の不足は表裏一体の関係にある」

2005/09/12