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とことこ古都散歩(宮田琴)
第5回 楽しみ方いろいろ −鴨川・出町柳から丸太町−
さて、前回ご紹介しました「ふたば」のある出町柳から出発しましょう。
お店を出て東に向かうと、すぐ鴨川と高野川の合流地点に出ます。
ここからは五山の送り火の「大文字」が大変きれいに見えるので
毎年8月16日の夜は人出も増えてとても賑やかになります。
少し北の方に目をやると「妙法」もちらりと見えます。
鴨川と高野川には河川敷に遊歩道がつくられているので
散歩にはもってこいです。
北に向かうもよし、南に向かうもよし。
また、川沿いには桜の木がたくさん植えられており
春には美しい桜色のアーケードが出来ます。
今回は南に向かってみましょう。
歩く時間帯にもよりますが
朝夕のころに歩きますと、鷺や鴨の食事時にあたり
これらの野鳥がたくさんみられます。
一時は河川の汚染により数が減少していた様ですが
水がきれいになったので徐々にその数を増やしてきている様子です。
遊歩道をのんびり歩くといろんな人に出会います。
ジョギング、楽器の練習、自主製作の映画撮影、お昼寝…
楽しみ方はひとそれぞれですが
ここにくるとほんとに皆んな自分の時間を楽しんでるなと思います。
ある日の夕暮れどき、
私は出町柳の柳月堂で買った「くるみパン」を片手に
ひと休みしようとベンチを探していました。
南に向かって歩いて丸太町まできたのですが
あいにくどこも満席でこまったなーと思っていましたら
おばあさんがひとりで座っているベンチを見つけました。
相席をお願いしたところ快く了承してくださり
「やっと涼しくなりましたねぇ」などと世間話を
しているうちに、昔の鴨川はどんな風だったかという話になりました。
「ちょっと前までは川端通りも
人しか通らへん細〜い道でしたんですけど、立派にしはってねぇ。」
おばあさんのいう「ちょっと前」は昭和10年ごろのお話でした。
川端通は現在はバスも車も行き交う片道2車線道路です。
またおばあさんいわく、現在の丸太町川端通りあたりには
川沿いに大きな市場があって新鮮な上賀茂の野菜や
とりたての卵が売られていたそうです。
いまは影も形もなくなってしまい名残りも見られません。
おばあさんに聞かなければ、このあたりに
そんな楽しそうな市場があったことなど思いもよりませんでした。
本には載らない、歴史のすきまを垣間見たような気分になりました。
おばあさんは毎日鴨川を散歩してこのベンチで休憩するそうです。
「ほなまたここでお会いしましょうねぇ」と言ってお別れしました。
それから何度か同じ場所でおばあさんに遭遇しました。
いつもはひとりで歩く散歩道も
顔見知りができると何だか楽しいものです。
2005/09/12