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丘の上から(小日向次郎)
第19回 「白洲次郎始めます」 ②
私が思う白洲次郎の「すごいところ」は、
戦後における日本を経済と産業の政策は貿易政策を
行うためのものであるという一貫したプリンシプル
(principal)というか原理原則を持ち、それが戦後
日本産業史の基本となったということ。
また、それが非常に簡潔で筋が通っているところです。
白洲次郎は戦後商務省の外局である貿易庁長官を務めた
ことがあります。
商工省を解体して通商産業省が後に作られますが、
通商産業省は白洲次郎が演出し商工省の有能な課長に
新しい省を作る脚本を任せたことにおもしろさがあります。
白洲次郎はこの課長に会社で言うところの実印と個人的に
使用する認印を預けていたそうで、この課長が提出した
文書を一読し「いいんじゃない」とその有能さに頼った
ところがなんとも言えません。
この関係は本当に特別なものかもしれませんが、
私は現代社会が忘れてしまった組織中の上下関係を
見直すお手本を見ているようです。
(詳しくは、「風の男 白洲次郎」青柳恵介著新潮社を
ご参照ください)
上の人は大筋で物事を決めて周囲への配慮を行うことで、
下の仕事を円滑にする。
下は自分の知識を上の事情に合わせて、「作品」を仕上げる。
その作品が日本の高度成長期を支えた通商産業省でした。
戦後史を知らない人に教える際にも、
難しい言葉で飾る必要のないとても理解しやすい考えでは
ないでしょうか。
高度経済成長、バブルそして最近の不景気など、
時代は変わっても「貿易国家日本」であることに変わり
ありません。
確かに昨今の貿易として脚光を浴びているのは
中国・インド・ベトナムを始めた新興国、投資先も先進国から
ドバイなどへと変わりました。
戦後は生産したモノを輸出していましたが、
今は蓄積された技術ノウハウでありまたは無形のモノ例えば
知恵でありまたは「礼」だったり。海を越えて輸出できるスタンダード
「枠」が存在しているのではないでしょうか。
2010/04/30