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丘の上から(小日向次郎)

第14回 身近な経済学者

オーストリアの経済学者シュンペーターは、
経済を学ぶ書生にとって身近な学者です。

書生1年生で彼の著書を読む人は多いかと思います。
英国滞在中私自身もその一人でした。

経済学と聞くと「難解!」と思われるかもしれません。

今回は彼の著書[経済発展の理論]を簡潔にまとめられている、
ダイヤモンド社ビジネスオンライン 
坪井賢一著【第28回】 2008年10月29日その一部を拝借して、
2点ほど書いてみます。

拝借したころは「」の部分です。

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「 イノベーションの5分類が描かれ:

(1)新しい生産物または生産物の新しい品質の創出と実現
(2)新しい生産方法の導入
(3)産業の新しい組織の創出
(4)新しい販売市場の開拓
(5)新しい買い付け先の開拓 」

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となっています。

シュンペーターは、企業規模が大きくなればなるほど
イノベーションを推進できると考えたようです。このため、
上記の説を客観的に証明しようと多くの学者が仮説を立て、
イノベーションと経済規模の相関を検討しました。

例えば、イノベーションの推進という定義を特許に出願した
件数などの客観的に測れるものに置き換えて、実証分析を
する手法が試みられました。

サンプル数を大きくしてみたり、国別に分析をしたり、
論文も相当学会に提出されています。

しかし、私の知っている範囲では、会社の規模が大きいから
と言ってイノベーションが生まれやすい環境とは結論できない
ようです。

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さて、その著書の最終章で、
「景気の回転」すなわち景気循環について:

「独創的で英雄的な企業者がイノベーションによって
 独占的な利潤を得たのちに、模倣する企業者が群生し、
 やがて超過利潤を取れなくなるとする。

 企業者はやがて単なる管理者となり、イノベーションの
 果実はなくなる。

 景気はここで下降するが、これは景気循環の必然であり、
 やがて均衡して次のイノベーションがやってくることに
 なる。」 

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とあります。

皆さんの周囲にも20年前は付加価値の高い技術を伴い
高価格で取引されていた機械設備が、今は国際的価格競争
に直面していることに悩んでいる方はいらっしゃいませんか。

また、機械などのハード面だけでなく、ソフトやサービスの
面でも同じことが言えます。

日本が優位とされてきた技術とその情報が海外に流出した
ことによりそれを模倣し、価格の安いモノが優勢となる。

そこでは技術の優劣よりは価格面での争いとなり、モノ1単位
あたりの利益が薄くなっている。

何十年で1サイクルなのかは、産業それぞれにより違うと思い
ます。市場の隙間を見つけ、または今まで商品ではなかった
ものの(その長年蓄積されたモノ)、気付かなかったニーズを
追い求めるのは企業の規模に関係なく、自然のことと考える
この頃です。

2010/03/26