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丘の上から(小日向次郎)
第6回 書生のころ
イギリスでの書生生活中のこと。
経済学の諸説によって経済モデルを作り、
実証分析を行う計量経済学を少し勉強していました。
「日本国内の建築需要」を調査するため、
各国の建築需要に関する文献や日本の統計資料を
収集し調査。イギリスにあるBritish Libraryと
東京にある国会図書館に大変お世話になりました。
調査を始めた当初は、日本の経済発展に伴い
どのような建築需要の動向があるかの分析を
しようと考えました。
しかし、統計を分析していくうちに中規模建築物
(6-15階建て)の需要は必ずしも経済発展の諸要素に
連動しないという見解が出てきました。
小生が10年前に行ったものですので、
今同じ調査を行えば違った結果が出ると思われます。
しかし、その当時は「自分の入力した数値がおかしい
のでは?」とか「ソフトウェアにバグが出た」など、
自問自答しながら来る日も来る日も調査方法の確認を
していました。「中規模建物市場は、経済発展の諸説に
連動しないという結果を尊重しよう」となった後は、
「どうして連動しないのだろうか?」との疑問となり
現在に至っています。
実験や調査の結論は柔らかく温かいものだと常々
考えています。
「きっとこうに違いない」「こんな結果になって欲しい」
と調べる前から観測を述べることは決して悪いことでは
ありませんが、自然の摂理は考えられないところにある
かもしれません。
2010/01/29