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中国名言と株式紀行(小林 章)
第135回 中国・天津より/中国株日記 (68)
【NO.71】中国、天津より(9)
今回は、成長市場における株式投資での、中長期投資のメリットの話をしたいと思います。
前々回までに北京・天津を再訪した話題を取り上げました。そこで、あらためて考えたことです。
私は天津滞在時に、中国国内の証券会社(具体的には、渤海証券)で購入した手持ちのB株を処分した話を書きました。
この上海と深圳のB株については、私は2005年に天津の私設両替商の旧知の友人・李さんから手持ちの日本円を米ドル(美元)と香港ドルに(港币)に両替してもらい中国銀行の口座に入金後、渤海証券の証券口座へATMから資金振替して株購入に当てたのです。
実は、この原資となった日本円は、事業投資で中国側で課税後に私への手数料報酬として支払われ、私が中国の個人口座にストックしていた資金と、日本で課税処理後に受け取った報酬のうちの私が妻からお小遣いとして貰ったお金を、同じく天津の上海浦東発展銀行の口座にストックしてあった日本円から用立てたものです。
日本の税制では、2011年12月の税制改正大綱で、海外にある個人の5千万円超の海外資産についても、毎年の税務調書の提出を義務づけるとしています。
「国外財産調書制度」と言いますが、創設の主旨は金融市場のグローバル化にともない、国外財産の補足が困難になってきたことから、毎年12月31日時点で海外に5千万円相当を超える資産を持つ個人(居住者)は、翌年の3月15日までに所轄税務署に「国外財産調書」を提出することになりました。
調書の提出義務を負うのは日本国に居住する個人なので、非居住者や法人は対象外です。「国外財産」とは、海外の金融機関で保有する預貯金や株式・債券などの金融資産だけでなく、海外の不動産も含まれます。
幸いにして、私の海外資産は限度額に達していませんでしたので、税務署への届け出義務はないようで、ホッとしています。ただし、給与所得が2千万円以下の確定申告の必要のないサラリーマンの場合、海外での銀行預金金利や株式配当などの投資収益についても年間20万円以上の額を超える場合は雑収入として毎年税務署での確定申告の必要性があります。
しかし、良く考えてみればおかしなことです。
海外の仕事で得た正当な報酬や日本で受け取った課税後の給与のなけなしの分配金を貯め込んだ資金や資産にも、限度額を超えての保有がある場合は、国民の義務として正しく税務署に届け出る義務があり、違反した場合は最高で懲役刑の罰則(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)まで用意されているというのです。
この海外資産に対する課税の是非については、届け出た日本の税務署の判断によって適切(恣意的)に処置されます。少しは本人の弁明も通用するかも知れませんが、課税認定は税務署側に委ねられています。
日本人の、個人での、海外での蓄財行為には見えない厚い壁が設定されています。
さらに、日本でや、現地での課税後の正当な個人資産でさえ、日本政府は関与や干渉しようというわけです。
公平に広く薄く徴収する消費税等の間接税の間近に迫った大増税だけでは、もはや日本の財政の債務超過はいかんともし難いのです。今や日本の財政赤字は、覚えやすい1234兆5千億円に迫ろうとしています。国民一人当たりの債務額に直すと約970万円になります。日本では「おぎゃあ」と産まれたばかりの赤ちゃんが、すでに約1千万円もの借金を抱えさせられてしまうのです。個人資産の尊重などと、体のいいことは言っていられない時代に突入しつつあります。
将来の富国政策などと悠長なことはかなぐり捨ててでも、目前の見込みの立つ国民の財産に先に唾をつけておきたい訳です。
日本の税制は、国籍による「属人主義」ではなく、日本に居住しているかどうかを基準とする「属地主義」をとっています。
日本での居住の事実認定について争われた元武富士創業者の相続資産裁判では、三分の一以下の日本での居住の事実が、贈与税の適用される居住の事実認定基準と示されました。司法の判断は、時に情勢により大きく揺らぐ可能性があります。かつての赤狩り(戦前・戦中に行われた特高による監視社会)のような課税強化の風潮が強まれば、居住認定基準はもっと引き下げられる可能性があります。1年の1/3は、121日程度ですが、3ヶ月(90日)間以下の日本滞在ならば、個人の海外資産が限度額を超えても日本での課税対象者とは認定されない可能性は残されています。
もし、海外資産についての相続税や贈与税の課税をどうしても回避したければ、相続人と被相続人双方が日本国民としての義務も同時に回避するため、いっそのことタックスヘブン地域や国に正式移住してしまって5年以上日本の非居住者とならなければならず、必要に応じて日本で90-120日程度過ごす程度であれば、この問題はスッキリします。しかし、日本に残る資産はいずれ処分しなければならない、という点や別の面倒はいくらかは残るでしょう。露骨な課税回避には、税務当局も黙ってはいないでしょうから、消費者金融の宣伝ではありませんが、時間を掛けて計画的に取り組む必要はあります。
もっとも、私は、国民の義務に反する課税回避を推奨するものではないことだけは断っておきますが、この時代に「国民の義務」を錦の御旗に掲げ、脅し掛けるようなことでもしなければ、国民が冷め切って付いてこないとは、何ともいえない情けなさも感じます。
これではちょっと、という人には、個人での限界がある以上、やはり海外に現地法人を設立して、海外企業を活用した蓄財活動をおこなうという手が考えられるでしょう。
こうしたケースであれば、日本政府の関知外の経済行為と見なされ、現地での企業活動に対する課税基準をしっかり遵守してさえいれば、当然ですが、すべて合法に企業の収益行為としての蓄財活動が可能となります。企業はどの国・地域でも、やはり営利活動のために設置が認められているからです。
日々を楽しむ生活費は、企業からの適切な給与や報酬、あるいは必要経費から賄われれば良いでしょう。
ですから、私は邱永漢先生の指摘された「現地企業をシェルター」として、様々な投資目的を持つ個人が集い、成長センター・アジアでの現地法人を活用して収益行為を組織的に進めたらどうかと具体策を提案しています。
要は、これからは過ぎたる個人資産は持たず、日本にも、海外にも、日本円資産の大幅な目減りを見越して、そのリスクヘッジのためには資産を分散しておいて、参加する資産管理企業によって有利に運用される資産原資から生み出される資金(経費)をもとに行き来しながら、どちらでも悠々自適に生活が出来れば、悔いのない良い老後が過ごせるのではないかと思うのです。
さて、中国・天津での私のB株投資の話に戻ります。
実は、2005年の1度だけ、自己資金の2/3を日本円を香港ドル(港币)に両替して有望銘柄の多かった深圳B株に、1/3を米ドル(美元)に替えて上海B株に投資することにしました。購入当初は深圳B株では、万科企業、中集集団、南山熱電、広東高速、晨鳴紙業、燦坤電器、広東電力、仏山照明、長安汽車、京東方、魯泰紡績、張裕葡萄を購入しました。上海B株では、耀皮ガラス、上海機電、陸家嘴、華新水泥、鄂尓多斯、振華港機を購入しました。
そして、ここからは新たに資金を入れての株購入はしませんでした。
ただ、既存の購入株の入れ替え目的での売り買いと配当金での株の買い増し以外は行うことはありませんでした。
この結果、8年後のこの3月4日に、すべてのB株を処分するに至ったのです。
別に、自慢するような気持ちはありませんから、いくら儲かったかは言いませんが、中国株での中長期投資のメリットを知って頂くために、私の事例をもとに基本的なことを申し述べたいと思います。
最終的には、深圳B株では、万科企業、江鈴汽車、杭州汽輪機、張裕葡萄酒の4銘柄が残りました。
万科企業をはじめ、それぞれの銘柄の購入単価は、2.216HKドル、3.985HKドル、6.727HKドル、3.228HKドルに対して、8年後の売却額はそれぞれ、15.75HKドル、20.84HKドル、14.09HKドル、38.32HKドルでした。
また、それぞれ、売却単価に対する購入平均単価の倍率は、7.1倍、5.2倍、2.1倍、11.87倍でした。
この深圳B株中では、張裕葡萄酒の11.87倍がずば抜けて高パフォーマンスを示してくれました。
深圳B株に対する総投資額における8年後の値上がり率は8倍を超えています。
結果としてですが、毎年投資額に対して2倍づつのリターンであったことになります。
一方の上海B株への投資成績は以下のようになりました。
上海機電 購入平均単価:0.86米ドル 売却額:1.18米ドル(1.37倍)
鄂尓多斯 購入平均単価:0.38米ドル 売却額:1.08米ドル(2.84倍)
伊泰煤炭 購入平均単価:2.84米ドル 売却額:5.75米ドル(2.02倍)
上海B株に対する総投資額における8年後の値上がり率は2倍を超えています。
こちらは、投資結果としては、毎年10%の利回りで回ったのと同様のパフォーマンスでした。
深圳B株と上海B株との投資パフォーマンスの結果で、収益に大きな開きがでた理由は、もちろん私、運用者の株銘柄の入れ替えミスやタイミングの悪さ、運用の稚拙さに大きな理由があります。
しかし、それ以外には、深圳B株の方に優良企業銘柄が多かったことで、現金配当に大きな差があったこと、また頻繁に行われた無償株配当により購入平均単価を大きく下げることが出来たことの2点が決定的でした。
特に、無償株配当は持ち株数が増え、購入平均単価が切り下がるのと同時に、次年度以降もこの銘柄が企業業績の好調を持続してくれれば、持ち株数が増えた分、現金配当金も増えることになりますから、株への再投資の原資に使える資金が増えるということでもあります。
ですから、深圳B株の張裕葡萄酒のように人気が出て大きく株価が跳ね上がることの無かった銘柄の株でも、長期的に右肩上がりの業績の好調が見込まれれば、中長期のキャピタルゲイン(差益利得)のリターンは2-5倍程度には確実に増やすことが出来ました。
結論は、中国市場を代表とする成長余地の高い個別株式銘柄への中長期での投資がどんなに報いられるかをまざまざと見せつけられる結果となりました。
こうした実地の実験結果を見ますと、あなたの目の色もクルクルと変わる思いがしませんか。いままで、中国本土株は1度買って持っているだけでも大きく報いられたことが、これでお分かりでしょう。
でも、中国株はこれでもうおしまいではありませんよ。これからのステージも用意されているということです。お忘れ無きように。
2013.03.28
2013/09/05