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中国名言と株式紀行(小林 章)

第117回 中国・天津から/中国株日記 (57)

【NO.58】中国、天津から(21)
中国株の長く続いた不振も、そろそろ底が見えたかな、と感じます。確信では、まだありませんが。

ということは、ようやくチャンス到来か、と早合点したくなります。

待たされている時間が長かっただけに、いやいや待てよ、確信の持てるシグナルや兆候を挙げてみなければ、説得力に欠けるぞ、と思い直すことが一度や二度ではありません。

実は、その肝心のシグナルや兆候はだいぶ出揃いつつあります。

まず、上海総合指数が9月26日に、とうとう場中一時1999.48ポイントを記録し、下値の抵抗線と考えられていた2000ポイントという節目を切ってしまったことです。
しかし、終値では2004.17ポイントと、かろうじて大台に戻して引けました。
これは、2009年2月2日以来の安値であり、2008年10月28日に付けた前回の下げ相場の最安値1664.93ポイント以来の記録となりました。

その後、2100ポイント目前まで相場は戻りましたが、そのきっかけとなったのが27日午後に流れた「中国証券管理委員会が大引け後、新規株式公開制度改革が早ければ10月末に実施され、その間数ヶ月の間の新株発行(IPO)を一時停止するなど、重大な政策決定を記者会見を開いて発表する」という噂でした。

さらに、歴史のおさらいをしてみると、2005年6月6日の場中に付けた998.23ポイントの最安値の後に相場が回復したきっかけとなったのは、非流通株の流通化を決定した「股権分置」改革の発動でした。
当時は企業業績は好調であるにもかかわらず、好調な景気に逆行する形で株価は約4年間にわたり下落と調整を繰り返していたのでした。

上記にも挙げたいろいろな条件を並べてみます。また、順番をちょいとひっくり返してみます。こうして時系列だったり、過去に起こった事象がごった煮になり、亀甲紋のように浮き出た印で占ってみます。

しかし、ちょっと漫画じみてきましたので、やめますが、重要なポイントは、中国経済の転換点の所在と上場企業の今後の企業業績と政府の取るべき政策の行方と株式市場を取りまく大衆心理の動向です。

(1)中国経済の転換点の所在
いままでの外資による投資受け入れ効果に依存した姿勢を改める時期にさしかかり、政策や税制面の優遇枠を取り払う政策が、外資進出の勢いを急速に鈍らせる一方、内国企業の入れ替わりも、国内からの要望ほどには勢いに欠け、期待どおりには成果が上がっていません。中国内からの資金の流出も見られるようです。そのうちの過半は恐らく外資からの引き上げの資金でしょう。

政府の前宣伝や小手先の介入の割には、内需振興策にしても、さしたる成果に結び付きづらい状況が現出しています。
しかし、中国の潜在的マーケット規模を考えれば、自発的な内需振興が焦眉の課題です。
また、貯蓄に回される銀行預金も膨大な額であるにもかかわらず、国債や公社債、一部の公共建設債などの安全運用、安定利息商品への投資が許可されているだけで、証券市場等での有効活用が制限されたままです。規制の緩和を伴う金融改革と政策の大胆な転換が何よりも望まれます。

(2)上場企業の今後の企業業績
今期の企業業績の下降傾向は顕著で、良い材料に乏しい相場状況では、もう一段のきつい下げが考えられるでしょう。1600ポイントまで届くのかどうかですが、覚悟は必要でしょう。

企業業績の調整傾向は何を意味するのか、単なる景気の減速に由来するのかどうか、といった視点が必要です。

こういう時ほど、個別の企業業績に目を凝らさなければならない時です。景気の減速に対応しきれず、業績を急悪化させてしまうような上場企業には、どこかしら問題が内包されているはずです。
企業経営の方向性にどこか迷いや問題があって、今般の景気減速への対応を怠っていたのか、企業経営陣に付け入る甘さがあったのか、企業業績の伸びに経営資源の不慮の不足が生じ、思わぬ失態を招いてしまったのか、何しろよく研究してみる必要があります。
業績失速の中、堅実に売上げを減らさず、利益を確保出来る企業こそが、光る玉ということになります。

(3)政府の取るべき政策の行方
中国市場の政策頼みの傾向は、多くの市場アナリストが指摘するところです。

今回ばかりは、政策先攻での先導相場になることはいつもと変わらないでしょうが、企業の業績回復は政策を追っかけて回復の兆しとともに上昇へ向かう相場に転換していくのではないかと予測されます。

中国証券管理委員会が、新株発行(IPO)を一時停止するなど、重大な政策決定を記者会見を開いて発表するといった噂やデマで、市場がどよめくのにも理由があります。
これまで中国当局は、証券市場の投機的な動きを封じるために、上場企業のIPOを過度に許容しすぎて、株式市場に向かうお金との需給バランスを調整することで、かろうじて株式市場の加熱化にブレーキを踏んできました。
しかし、それは過度な当局の介入だとマーケットは読んで、不自然なマーケットの動きに嫌気を感じてきたのです。

現政権は執行部の退陣を目前にして、市場対策に向けての新政策を打ちづらい状況にあります。
しかし、中国では、党大会など重要な政治のビッグイベントの時期に株価は下げたことがないというジンクスもあります。
10、11月以降、新政権への引き継ぎが順調に進み、来年3月の全人代までに新たな政権執行部は面子をかけて景況や相場の回復に手腕を振るうことになるでしょう。
所得政策に、新機軸が打ち出されて、中間層への所得増政策や格差是正策が打ち出されれば、市場は徐々に反応してくるかも知れません。

(4)株式市場を取りまく大衆心理の動向
一般の股民の株投資への期待感は、不動産投資と比べれば、大変低調なものがあります。では、股民の目を株式市場にもう一度向けさせるには、どうすればよいのでしょうか。
それは明快で、株価の揺るぎない上昇を見せつけ、儲かると思わせなければなりません。
股民は勝ち馬に乗りたいと願い、いつもウズウズしているのですから。

2005年の非流通株改革の時も、4年の長きにわたり、市況は塩漬けのまま放置されていました。企業業績にも非の打ち所はなかったのに、勝ちどきの烽火は上がることはありませんでした。株式市場の地下には熱いマグマが作り続けられていたことを多くの人は気づいていませんでした。

今回も同様に深い地下では熱い巨大なマグマが醸成されているのです。地表付近に移動を開始し、いつ噴出を始めるのかが大きな焦点となります。
しかし、過去の相場のような激動や急騰を期待するのは、もう難しいかも知れません。
株価総合指数が1000ポイントづつ段階的に長期のスパーンで切り上がる、そしてそこで上下の攻防が果てしなく繰り拡げられ、いつかまた1000ポイント切り上がっていると言ったような相場展開を、私は考えています。株価は、必ず上がっていくでしょう。

しかも、その時は刻一刻と近づきつつあります。

2012.09.27

 

注)この記事は、過去のものからの再録の形で転載させていただいております。時事的に古い話題が取り上げられていますが、内容的には時間の風雪にも耐えられるものと思い、取り上げさせていただいております 。
 

2013/06/19