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中国名言と株式紀行(小林 章)
第113回 中国・天津から/中国株日記 (55)
【NO.56】中国、天津から(19)
上海、深圳の株式市場に上場する企業の中間期(6月季)の決算が出揃いました。
総じて企業業績の減速傾向が目立ちます。それは、すでに第1期(3月季)の決算を見ただけでも明らかでした。更にいえば、11年末(12月季)の本決算の発表内容と配当の状況を見ただけでも予測がつきました。
昨期末の配当では、各社軒並み現金配当も控えめでしたし、例年であれば無償株配があったのが、ことごとく封印されてしまったのでした。
この度の中間期の業績を具体的一株収益に注目して見ると、参考に上位20社の業績を上げておきます。
(元) (元) (万元) (%) (万元)
No. 銘柄名 一株収益 一株純資産 純利益 純資産収益率 主営業収入 発表
1 600519 贵州茅台 6.74 26.81
699572.16 25.13 1326443.78 2012-08-10
2 002304 洋河股份 2.94 10.85
317388.65 27.09 930977.24 2012-08-23
3 600694大商股份 2.51 14.26
73666.77 17.59 1616647.76 2012-08-24
4 900948 伊泰B股 2.19 12.21
320981.52 17.96 1303619.55 2012-08-28
5 601318中国平安 1.76 18.54
1395900.00 9.51 0.00 2012-08-24
[中期配当:10派1.50元(含税;扣税后10派1.35元)]
6 601166兴业银行 1.59 12.03
1710200.00 13.18 4122100.00 2012-08-10
7 300346南大光电 1.45 8.81
5472.94 16.47 11240.08 2012-08-06
[中期配当:10派10元(含税,扣税后10派9元)]
8 000568泸州老窖 1.44 5.23
200872.53 27.49 519258.42 2012-08-09
9 600340华夏幸福 1.43 4.31
126037.35 33.15 442600.15 2012-08-15
10 000869 张裕A 1.34 7.49
92114.35 17.94 301258.41 2012-08-07
11 000858五粮液 1.33 6.91
504625.51 19.24 1504970.94 2012-08-20
12 000001平安银行 1.32 15.58
676148.50 8.47 0.00 2012-08-16
[中期配当:10派1元(含税,扣税后10派0.9元)]
13 601088中国神华 1.27 11.63
2518100.00 10.88 12146800.00 2012-08-25
14 600436片仔癀 1.22 9.02
17091.10 13.53 57309.53 2012-08-10
15 600216 浙江医药 1.21 10.40
54410.13 11.63 271702.04 2012-08-30
16 000338潍柴动力 1.14 14.76
189725.26 7.72 2705967.56 2012-08-31
[中間配当:10派1元(含税,扣税后10派0.9元)]
17 600729重庆百货 1.11 7.97
41482.56 13.95 1541495.59 2012-08-28
18 300340科恒股份 1.11 9.90
4148.96 11.17 30329.14 2012-08-23
19 300305裕兴股份 1.10 14.13
7713.33 6.82 23196.08 2012-08-25
20 600036 招商银行 1.08 8.40
2337700.00 12.89 0.00 2012-08-18
上記の上位上場企業のうち、B株や香港H株などで馴染みのあるのは4、5社程度でしょう。
やはり、中国株を全般的に網羅して語るにはB株やH株だけでは役不足です。
全球的グローバル化の時代は、巨大多国籍企業を生み出しました。
中国発のソニーやHONDAを期待する向きもありますが、時代環境は変わってしまいました。美味しい商売を、資金調達の容易な多国籍ガリバー企業が手放すことはないでしょう。それでも、中国企業は、先ず国内市場で勝ち上がり、国際競争力を付けていく道筋を辿って有望企業が巣立っていくことになります。こうした中国発の有望企業は、長期株投資向きでしょう。そうした企業を見つけて、長期投資するのが株式投資の醍醐味です。
例えば、中国の衣料品市場に目を転じてみると、中国の現在の市場規模は日本とほぼ同じ水準の12兆円規模だそうです。
ところが、2020年には40兆円規模に拡大することが確実視されています。現在の規模のおおよそ3.3倍となるのです。
さらに、衣料品に限らず、生活のなかでどれだけ繊維製品を消費しているかを国別に比較した統計では、米国が1人当たり約30kg、日本は約28kgとなっています。これに対して、まだ中国では1人当たりでは4~5kgと低水準の段階にあります。これは、米国と比べて1/6~1/7.5ですから、伸びしろはもっと大きいのです。
これからの中国の中間層の所得の伸びを考慮するならば、この数字が2020年までに激増することが容易に予想できるでしょう。
こうした事例が、多少の中国株の不振を振り払う要素でもあります。なんといっても、株式市場は企業業績を映す鏡のようなものです。とりわけ消費財関連の企業業績に対する見通しは大変良好です。
外貨調達の手段であった中国B株についてです。
中国本土株銘柄で、外国人が唯一取引できる米ドル建ての上海B株と、香港ドル建ての深圳B株について、証券当局側の意向がわからないまま、新規上場やさしたる盛り上がりもない低調な推移が続いていますが、ちょっとした関係者からの憶測が漏れています。
それは、証券当局のB株廃止の方向性についてです。
現状では、A株とB株の統合や一物二価による株価の高いA株へのサヤ寄せなどの可能性はまったく無いようです。
ということは、どう処理しようとしているのか。
いずれにしてもB株の生き残りの可能性は薄いようです。当局はB株廃止をする際、株主への時価での整理返金を迫られます。
その場合に、しかるべき時期に、新規にA株を増資して、資金調達してB株解消の資金に充てる案と、香港H株への上場と引き替えにB株の廃止を行う案があるようです。
しかし、業績良好株や資産基盤のしっかりしたB株銘柄はよいのですが、B株のなかには業績の悪いST銘柄などが20銘柄程度あります。これらの扱いや廃止をどう行うかが焦点となっているようです。
意外に、近いうちに結論が出るかも知れません。
2012.08.31
注)この記事は、過去のものからの再録の形で転載させていただいております。時事的に古い話題が取り上げられていますが、内容的には時間の風雪にも耐えられるものと思い、取り上げさせていただいております 。
2013/06/11