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中国名言と株式紀行(小林 章)

第49回 中国・天津にて/中国株日記 (23)

【NO.24】中国、天津にて(23)
ここ天津でも、夏の日差しに明らかな陰りが見え、天候の良い日は外出して、木陰にでも入ろうものなら、すがすがしい爽快感を覚えます。ここが乾燥っぽい大陸性の気候の良いところです。日本での湿り気感がありません。

大きく背伸びをして、新しい空気を身体に送り込みながら、風景を見上げ、水辺に目を落とし、空を仰いでみます。
すると、もう一回り散歩を続ける気持ちの余裕が湧き上がってきます。

 
何度も述べているとおり、只今天津の市街地はそこら中掘り返しており、にょきにょきと高層の建造物の骨組みが空に向かって伸びたり、平地にされた工事現場からは重機の音が響き、あちこちの工事現場の囲いには完成後の建物や街角の様子が描かれており、時々足を止めて、将来の変貌に思いを巡らせてみることもあります。

この天津の不動産ですが、まだまだ上海や北京での価格の値上がりに遠く及びません。
私の3年前に購入したマンション(未内装、未入居)の平米単価も先日不動産屋に確認したら、やっと2倍に近づいた程度です。

これからの天津での建設中の大量の高層ビルの完成による、マンションやオフィスなどの供給開始は、果たして天津の不動産事情をどう変化させるのか。供給は需要を満たせるのか、と心配になります。

しかし、天津は上海や北京には見劣りするものの、中国内にあっては主要都市の一つであり、天津経済開発区や更に規模の大きい国家プロジェクトである天津濱海経済開発区の造成が急ピッチで進行中です。ここの目玉は何と言ってもエアバス社の機体の組み立て工場の誘致に成功したことでした。
また、上海港や深圳港に次ぐ第3位の取扱量を誇る天津港の存在も大きいものがあります。天津は勿論、北京や河北省周辺のコンテナ貨物は皆この天津港を経由して海外に輸出されているのです。

この経済と物流の要衝として、近代化が急速に進む天津ですが、昨年までの中国の不動産平均価格の地域別ランキングでは、2005年と2006年の平米当りの比較で見ると、

1位 北京 6788.1元 8279.6元 21.9%
2位 上海 6841.9元 7196.1元  5.2%
3位 広東 4442.8元 4877.4元  9.8%
4位 浙江 4280.1元 4802.2元 12.2%
5位 天津 4054.9元 4773.8元 17.7%
6位 福建 3161.8元 3994.2元 26.3%
7位 海南 2923.0元 3632.2元 24.3%
8位 江蘇 3358.8元 3588.7元  6.6%

と、第5位でようやく不動産価格の上昇に勢いが付いてきたということが言えるでしょう。

それにしても、中国で一番地価の高いのは上海だ、とのイメージがありますが、昨年はオリンピック開催の勢いなのか、とうとう首都北京が平米単価でも上昇率でも上海を追い抜きました。
すでに上海では都心周辺での地価は上昇していないとも言われています。北京の地価もここ2年ほどで3、4倍にも上昇しており、高騰の余地は少なくなってきています。

不動産の高騰を狙うなら、天津は格好の材料となるでしょう。少なくとも私はそう見ています。

天津の一般市民(=老百姓)には、不動産は既に高嶺の花です。とても都心の高級マンションには手が出ません。不動産屋に聞くと40~50平米の郊外の部屋が売れ筋なのだそうです。価格は30万元から50万元と多様です。
老親が亡くなると、その住居を子供兄弟が競って、喧嘩はまだしも裁判沙汰になる時代です。我が工場の事務員の親もそれが原因で夜も眠れずノイローゼぎみとなり、事務員の娘は付き添いのために1週間も会社を休業なんてことが頻発しています。
生前に遺言などを残すことをテレビの相談番組では勧めています。老夫婦のかつて住んだ部屋は、所属の国営企業(単位という)が無償で与えた2DK程度の部屋ですが、今やその中古住宅価格も15万元(約240万円)から30万元(約480万円)にもなるそうです。
2007/09/15

 

[コメント]①
不動産相続も値段がある程度以上だと家庭が崩壊っていうのはどの国にもあるものなのですね。

日本にいると個別の不動産投資をすることが難しいですが、現地で開発されていく姿をみることができたらきっと投資したくなると思いますね。

日本で、不動産が10%を超える成長をすることなんてもうないでしょうからね。

[コメントへの返答]①
我々庶民が直接投資して収益を上げられるものの筆頭は、昔から株と不動産と決まっています。

しかし、最近は「債券」「ファンド」と言った概念のあやふやな金融商品が多数開発されて来て、それはそれで庶民にも手が出しやすい仕組みになっているようですので、投資の枠が広がり、選択の余地も大きくなりつつあります。

しかし、今回の米国の低所得者層向けサブプライマリー・ローンなどという「債権」を債券化して「金融商品」にしてしまったり、劣後債といった信用度の低い、いわゆる借金を債券として小口に分けて金融商品として売り出したり、などなど...。
こうした金融商品化は、欧米、特に米国が自国の基軸通貨であるドルを大量に印刷して来た結果(貿易相手国への支払い等で)、その米ドルを暴落させないために、再びこうした「金融商品」を、多少の利息を付けて、他国の保有する米ドルで買わせて、紙切れを回収して歩いているようなものです。
更に、悪いことにこうした、いかがわしい「金融商品」にもちゃんとしたお墨付きを与える格付け会社(大手はいずれも米国企業)と手を携えて、信用を与え、信用力を売り物にして商売と発言力拡大を図っているのです。

いわば、このマッチポンプの仕組みがいつまで続くのか。 米国の凋落は今や明らかで、こうした金融商品といった売り物が無くなった時に、米国はドル(紙切れ)を回収できず、ついに、だぶついた米ドルは各国通貨から売り浴びせられ、暴落を始めるものと思われます。
国際社会に、警察権だけを笠に発言力を維持する軍事大国で有るだけの米国の黄昏は、誰もが想像だにしたくない姿です。

やはり、私は投資の基本である株と不動産が安全かと、思ってしまう今日この頃です。

[コメント]②
FXなどはまったく興味のかけらもわかないのでやることはないと思いますが、それでも日本から中国株を買うと為替損益も意外と関係してきますからね。

直接中国元や香港ドルで直接購入したいと思うことも多々あります。

 

注)この記事は、過去のものからの再録の形で転載させていただいております。時事的に古い話題が取り上げられていますが、内容的には時間の風雪にも耐えられるものと思い、取り上げさせていただいております。

また、記事にコメントやコメントに対する私からの返答が付属されているものもあります。 

2013/02/03