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中国名言と株式紀行(小林 章)
第32回 明けましておめでとうございます。
明けましておめでとうございます。 新年好。
本年の皆様方のご健康と益々のご活躍を祈念致します。 萬事如意。
昨年の11月から、戸田先生の特別の計らいにより『戸田ゼミ通信』でコラムを担当させて頂いております。日頃よりのご愛顧、誠にありがとうございます。
題名は『中国名言と株式紀行』ということで、まずは邱永漢監修『四000年を学ぶ中国名言読本』からの名言の紹介、解説、独自解説と、時に脱線という三度の「味わい」+アルファということで書いています。
名言は、先賢の智慧を借りるにはうってつけの題材でもあります。あらためて取り上げてみて、深読みしてしまい、かつあっちこっちに話題がずれまくり、何とか読み物に収まればとの思いがいつも強いです。私自身書きつつ、考慮しつつ、調べつつ、また書きつつ、一つづつ勉強になってるなァ、と感心もしています。正直、書いていて自ら楽しめている面があります。
現在中国を理解し、少しずつひもとく上で、参考になればとの思いで書き上げています。
多少突飛な、定説を覆すような独自解釈があっても、ご寛恕、お許しあれ。
名言の方は、ア行が終わりかけで、まだまだ続きます。
株式紀行の方は、天津日記と称して、他ブログに掲載していたものを転載させて頂いております。皆様のなかにも、中国株に馴染まれている方も多いと存じますが、中国株をやる以上、その中国株式市場のファンダメンタルを左右する中国一般庶民(股民)の考え方や気風、行動の原理、その動向は無視することは出来ないとの私なりの考えから、現地レポートのような形で始めたブログです。
始まりが、2007年6月からですので、時間の経過は否めません。陳腐化のご指摘があれば甘んじて受け入れざる終えませんが、私自身で読み返してみて、まあ大丈夫かとの思いからコラムに組み込むことに致しました。
昨今の中国株を取りまく状況は厳しく、投資パフォーマンスに不満を感じておられる方も多いと存じますが、今後の中国株は間違いなく次の成長段階に入っていくと、私自身は確信しています。
その根拠は、これまでの海外からの投資によるGDPの牽引ではなく、中国自体の国内市場の活性化による成長力にあると思われます。本当の意味で中国国内の消費に火がつけば、もう一段や二段の成長は自立的に望める段階に来ています。すなわち、労賃の本格的な上昇が始まり労働集約型の「幼稚産業」が海外へ逃げ出しています、輸出産業は海外での貿易係争に巻き込まれるようになり産業構造の転換と高度化が求められています。また、社会的公正に人々の目は移行し、不平等や厳しい統制緩和への意識は高まりつつありますし、特に戸籍制度などの都市と農村を縛ってきた伝統的制度の改革(農村都市化策)が新政権の発足と同時に本格化しだしました。中国政府の喫緊の課題は、人々の不平不満を放置することなく、改革軌道に何とか乗せて、国内に滞留する膨大な金融資産を配分・循環させて消費市場の拡大に向かわせることで、更なる産業振興に繋げ、GDPの引き続きの高成長を維持する必要があります。今政権の課題は少なくとも、こうした流れに道筋を付けることです。そうしなければ共産党政権の延命は望めないからです。
国内の金融資産の蓄積が進み、企業だけでなく個人の消費行動にも影響を及ぼし始めています。これまで人々の消費は退職、家、緊急事態、大きな買い物、子どもの教育のために貯蓄され、抑制されたものでしたが、多くの希望が具体的な目標に変化し、実際に手にした人々から順に、消費への渇望が満たされていくことになるでしょう。ですから、今後の株式市場の注目企業銘柄は大型消費関連企業に移行していくことになるでしょう。
この私の株式紀行については、2012年10月分まで60回分ありますので、掲載予定分が終了しましたら、新しいコラムに差し替えたいと思っています。
新しいコラム内容は、戸田先生との会話のなかでヒントを頂いた成長する東アジアで「起業する」に関するものにチャレンジしたいと考えています。
私自身、おおよそ20数年前に小企業ながら日本と中国で起業独立を果たし、年商3-5億円規模の企業に育て上げることができましたが、この苦労や経験を自分だけの経験に止めるのではなく、これから個人や法人としてのスモールビジネスを起業し、大きく育てていきたいという志を持った方々に何がしかの力になれるのではないかと思い、東アジアで起業講座的なコラムを企画しています。
私は、すでに中国と日本での別のビジネスをスタートさせていますし、企画中のものもあります。また、中国株は本命のA株を中心にウオッチし続けていますし、これからは投資家としての目でも、株式投資を東アジア規模での個人のスモールビジネスの一つとして取り組めたらいいな、と考えています。
今のグローバル化の時代、活力と勢いを自ら求めて、有利な投資場所で有利な投資先にターゲットを定めて、止まって待つよりは、成長する地域を知る人が先に動いていった方がチャンスも多く確実に利益が出せると考えます。勿論、その自身の能力や人脈、ノウハウ等が必要になります。こうした、基礎を身につけるための起業講座を考えています。
日本では、投資は実業ではなく虚業、あるいは不労所得と蔑むような眼で見られている面も否めません。経済では規制緩和が進んでいますが、偏った社会的風潮も強く、肝心の法制や税制面では旧弊は放置されたままです。
仮に、事業として15-25%の投資利益が得られる投資であれば、投資規模さえそれなりの額に達していれば、個人の集合投資活動といえども立派なスモールビジネスと言えるでしょう。有利な投資場所で有利な投資先を見つけて実行するということは、私たちの経済活動を有利に進めるための租税面や規制フリーとも関連してきます。かつてのアジアの富豪達が辿った道、すなわち有利な投資環境で利益蓄積が早くできれば、企業展開も短期に進むわけですから、一所に止まる理由はまったくありません。できるだけ早く立ち上げ、速やかに展開でき、一定の安定軌道に乗せることができます。
日本人は、成長途上の東アジア諸国民と比べても、皆それぞれにそれなりの規模の資産を持つわけですから、上手くリスクをコントロールしながら、国内に止まらないで海外での有利で確実な資産運用を心掛けるだけで、老後や次世代に繋げる資産は十分残し発展していけるのです。また、気付かない人も多いのですが、経済の高い成長期をすでに経験もしていますし、それだけの種種諸々の先行条件を有していると思います。
しかし、詐欺商法的な、お金だけ出せば有利な投資にありつけるなどというような話は、勿論100%あり得ません。
個人が恒常的に資産を築き、かつ順調に増殖させていくためには、ハードワークなど様々な方法で先ず一定の資金準備をし、それを効率的、かつ有利に運用し、有望な事業を自ら所有し、時間に縛られるのではなく、その人の成果によって正当な報酬を受け取る仕組みを構築する必要があります。
かりに多くの有望事業が、海外での経済成長の波に上手く乗って、日本人の手で多く勁(つよ)い草の根のように育てば、かつて中国本土で経済の奇跡が起きたように、何れの日にか、沈む日本に外から活力を与える力となるかも知れません。今の日本には、内からの沸き上がるような力は弱くて、経済活動は成熟し、金融市場は外資の資金に頼るような状況です。ですから、政治家は、逆に「強い日本」と言わざるをえないのです。
日本は、この数十年、経済では中国、政治外交などでは米国を最大の相手国としてきましたが、少なくと経済面では、これからも中国を含む中華系の人々を最大の相手として行くことに間違いはないでしょう。
何故ならば、成長著しい東アジア諸国で、住人の勢力や政治の実権は別にして、現地で大きな経済の実権を握り、経済活動を活発化させて経済を牽引しているのは何れもかつての華僑を含む中華系の企業だったり人々だからです。
グローバル化の時代は、何も世界規模で多国籍な巨大企業ばかりが活躍する時代ではなく、個人や小さな企業が起業家精神を大いに発揮し海外で継続・発展できる事業を保有すべき時代でもあると考えるのです。
こうした個人が事業で活躍できる時代を、私は自分で勝手にスモール&スマート(Small&Smart)な企業、ないしは事業の時代だと定義しています。
人と知恵と技術、お金などを結集して、集団であたる、小グループであたる、現地の有望企業と組む、知恵と技術を持てる者の技術力とデザイン力、複合組合せ能力を活かして、投資対象や業種業態によって縦横断的に組んでプロジェクトを進めるような業態のあり方が必要なのではないかと考えています。勿論、企画し、調査し、全体を統括し、進捗を管理し、適材適所を徹底し、新技術の導入を促し、投資資金を呼び込み、現地流通に結びつけ、接客サービスを指導し、余剰利益を受益者に適切に配分し、次の投資に備え、次々と有望投資先を企画開拓していく機構の役割も重要になります
最後に、邱永漢著『日本脱出のすすめ』の中の印象的な言葉を掲げて、昨年惜しまれつつ物故された尊敬する邱先生の遺志を、微力ながら引き継いでいきたいと考えています。
「華僑と呼ばれる人々が政府の援けなど一切あてにせず、自分らの力で自分たちの財産と地位を外国に築いてきたように、日本人も自分らの会社をシェルターとして、チームワークを組みながら国際的に自分らの世界を築かなければならない時代になってきたのである。」
2013年 元旦
小林 章
2013/01/01