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中国名言と株式紀行(小林 章)
第22回 中国・天津にて/中国株日記 (10)
【NO.11】中国、天津にて(10)
今、中国で若者の間で見られる現象として「AA制」と「月光族」が、よくマスコミでも取り上げられます。
「AA制」とは、日本での「割り勘」の意味です。すなわち、飲み食いの代金を折半する、というあれです。
日本で当たり前の制度ですが、中国では元々こんな制度はありませんでした。日本の風習の輸入版です。
中国では、宴席や酒席の場の支払いは、その場を取り仕切る人の受け持ちと決まっています。
例えば、その席で一番目上に当たる人や、羽振りの良い人、その会合の言い出しっぺの人が、その席の支払いを受け持つのが普通なのです。
仮に、そうした要件を満たせなかった人は、後々まで人々の口上に上り、恥をかく(すなわち、中国でよくいう面子を無くす)ことになります。
最近、天津のレストランでも、よく若者のグループに出くわすようになりました。こうしたことは、数年前ではほとんどありませんでした。
大抵は家族団らんや同年代同士の食卓、親戚縁者によるお祝いの席や結婚披露宴、そして企業での接待の宴席でした。
若者同士でも、それぞれの職場や学校での集いを、お金のかかるレストランでの宴席で、ごく普通に行うようになったのです。
その場合、若者は手持ちの資金を、お小遣いか親に頼るか、限られた給料の中から捻出せざるをえませんので、いわゆる「AA制」という「割り勘」の風習が、若者に広まっていったのです。手持ち資金の少ない若者同士の楽しみを作り出す、知恵でもあるのでしょう。
おかげで、今、天津でも露天や屋外の中小レストランでも炭焼きの焼き鳥風の店が大繁盛です。
焼き鳥と言っても、当地での主流は、羊肉の串焼きです。
天津や北京など北方の都市には、回族と呼ばれるイスラム系の中国人が多く居住しており、串焼きは、いわば青い目をした彼らの専売特許でした。彼らのメインディッシュは羊肉ですから、街角のあちこちで羊肉の串焼きは、数十年も前から営まれてきた庶民の手軽な風景でした。
羊肉は、焼いても独特の臭みがあり、それを消すために独特の山椒や唐辛子などを混ぜた香辛料をたっぷり振りかけて食します。
しかし、にわかに最近、夕方になると、回族ではない人の焼き鳥のお店が、あちこちに新規オープンして、モクモクと立ち上る焼き鳥の煙があちこちに出現して、若者を中心としたお客を吸い寄せて、賑わっています。たぶん日本の焼鳥屋のイメージを取り込んでいるのでしょうが、旧来の回族の串焼きの風習もコラボされた独特の形だと思います。
また、こうした店には、羊肉だけでなく鳥の手羽先や砂肝、焼き魚、麺類などもありますが、何しろ焼き鳥は1串が安価ですから、若者でも十分、支払いが折半なら、飲んで食べて、楽しい会話に花が咲きます。
こうした風習の移り変わりを見ながら、ついふらふらと、一番賑やかな一角に立ち寄り、私も1杯引っかけています。
続きは、もう一つの「月光族」についてです。
2007/07/11
[コメント]①
はじめましてです。
リアルな中国事情大変興味深いですね。
仲間と呑む機会が増えると言うのは民主化の大いなる一歩ではないでしょうか。この文化の輸入はとてもイイですねー
「月光族」も気になります。
今後とも宜しくお願い致します。
[コメント]②
はじめまして。
いつも日記楽しく読ませていただいてます。
いろんな民族と文化が入り混じって、新しい文化や風習が生まれている中国の勢いを感じます。
読んでいて、私も焼き鳥が食べたくなりました。
[コメント]③
はじめまして、
日記を拝見させていただきました。
非常に面白く読み物としても最高です。
すごく勉強になります。
是非これからも頑張って続けてください。
「AA制」についてははじめて知りました。
ワリカンの風習がなかったことに驚きです。
昔の若者は若者同士で食事とかに行かなかったんですかね?
文化と風習が違うのであまり想像はできませんけど、昔はどうしてたんでしょう。
あまり考えたことはないですけど、ワリカンの風習がない国ってもしかしたら他にもあるのかもしれませんね。
[コメントへの返答]
コメントありがとう御座います。
この日記は、少しでも中国株に興味を持って貰いたいと、始めたものですが、皆さんの暖かい気持ちに支えられて、思わぬ展開になっています。
なかなか仕事の関係で時間がとれず、それでも自身の時間を潰してでも、書く意味があるなと、本当に嬉しく思っています。書ける時に集中的に書いています。
日本株もかつては勢いのある企業が多数あり、すばらしいパフォーマンスが演出できたのでしょうが、株式の華やかな時代は、その国の成長期にあります。
中国は、現在、民主化に対してよりも、経済に重きを置く政策が進行しており、民衆の表立った不満も、多くは相殺される方向で、社会の仕組みが変化してきています。
中国の為政者も、知恵がないわけではありません。日本以上に、人材や英知を要して、変化に対応し、軌道に乗りつつある経済の舵取りを誤らないように、用意周到に学習し、素早く実践に移しつつあります。
中国の変化は、私には大変刺激になっています。
中国人の無軌道な振る舞いや、態度はこれからも健在でしょうが、私としては良き隣人として、敬意を持って接していきたいと思っています。
もしよければ、また、懲りずにコメントを下さい。
[コメントへの返答]
この日記に対する、嬉しいコメント、本当にありがとう御座います。
前回の中国出張は、短期間でしたが、焼き鳥は堪能して来ることが出来ました。
当社の中国側の会社の顧問弁護士(実は、彼はめっぽう酒好き)と、うだうだと語り合い、2時3時まで、くだんの焼鳥屋で飲み明かしておりました。
かの弁護士くんは、株投資も人後に落ちない人士でして、中国株の鑑定資格も持っているとのこと、酒好きが高じて、持ち株も中国A株の白酒メーカーである貴州マオ台酒や古井貢酒など、自分の趣味にあった企業への投資が中心で、この所の中国株の高騰で、何を勘違いしたのか「自分は株投資で十分食べていけるのだが、それでは自分の娘の親の職業を聞かれた時に、あまり案配がよろしくないので、これまでの弁護士の仕事は娘のために続ける」などと酒席でほざいておりました。
ばかが、少々株で儲かったぐらいで偉そうに、まじめに弁護士の仕事をやれ、って言いたいのですが、その感情は抑えて、お相手しておりました。少し高騰したら、持ち株をすぐ全株売り払って、お金に換えているくせに、何を偉そうに、と思いつつ、彼の怪気炎を肴に、飲み相手をしておりました。
いつか機会がありましたら、是非お相手したいですね。
[コメントへの返答]
我が日記に対するコメントありがとう御座います。
楽しく読んで頂いているそうで、大変励みになります。
前回の出張で、焼鳥屋さんでのひとときを過ごしていると、隣の席の1人客が不意に声を掛けてきて、一緒に飲まないか、というのです。
彼は、黒塗りのアウディで乗り付けてきて、一人で時間を費やしていたのです。
彼に聞くと、政府系の金属加工企業のトップで、友人との飲み食いの席を避けて、時々こうした1人の時間が楽しいのだと言います。
息子に過度の期待を掛けていたにもかかわらず、現在は彼の意に反して、定職にも就かず、気ままな生活態度が改まらないので、ほとほと諦め気味で、出来の悪い息子のことをひたすら嘆いておりました。彼は日本にも商売で訪れたことがあり、大人の会話が楽しめる世代の人でした。
この焼鳥屋の店主にも顔が利くらしく、最後別れ際には、すったもんだの挙げ句、お勘定は彼持ちと言うことになりました。AA制とは、いいかなかったのでした。彼は「今回は俺の面子を立ててくれ」と言うのです。
楽しい時間の共有は、お互い為になりますね。これからも天津日記をよろしくお願いします。
注)この記事は、過去のものからの再録の形で転載させていただいております。時事的に古い話題が取り上げられていますが、内容的には時間の風雪にも耐えられるものと思い、取り上げさせていただいております。
また、記事にコメントやコメントに対する私からの返答が付属されているものもあります。
2012/12/13