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中国名言と株式紀行(小林 章)
第6回 中国・天津にて/中国株日記 (2)
【NO.3】中国、天津にて(2)
ここ、中国の天津の6月は、どんより曇った日もたまにありますが、日本のような梅雨空はなく、もう真夏という日が日中は続きます。
しかし、日差しの強い日中でも、木陰や建物の庇の中に入れば、意外に涼が感じられ、湿気の無いのが救いです。
夕方になると、道路沿いや家の外に風呂椅子のような足の短い椅子を独自持ち出し、涼の下での会話やトランプゲームまた中国将棋に興じ、またそれを取り巻く多くの人の姿が見られます。
特に天津名物の川沿い(海河と呼ばれる運河跡)の遊歩道や橋のたもとには多くの市民が夕涼みを楽しみに出向き、その人出を当てにした小物商売の人が、にわか露店を構え、賑わいを増しています。天津の風物詩ともいえます。
一般市民の朝も早く、道路清掃員や交通整理の警官や朝食を買い求める市民たちが現れ、その内に通勤の自転車やバス、めっきり増えた自家用車が行き交い、かなり激しい交通ラッシュを迎え、バス停は待つ人で溢れます。車のクラクションは、しばらくは鳴りっぱなしになります。
午前9時頃には、ようやく幹線道路の混雑は下火になり、丁度証券会社の営業窓口が開く頃には、待ちかまえた数十人が階段を駆け上り、中に消えていきます。
丁度、私の通りかかった証券の支店に入って行く、十人位の団体を引率してリーダーらしき男が私の前を通り過ぎていきました。聞こえてきたのは、初心者らしき団体に証券窓口での手続きや株購入の手順を教えているらしく、皆リーダーに従って建物の中へ吸い込まれて行きました。
中国では、今年に入って「股民」と呼ばれる一般投資家の新規口座開設数が急増しています。
元々、理財に聡い中国人ですが、ここ数年は堅実な預金性の貯蓄や国債など安全で利息確定型の投資のうち、少しでも利息の稼げるものに人気がありました。大手の証券や銀行窓口で取り扱われる基金(投信)にも、この所の株高で人気が出ています。窓口に張り出された、先月までの運用実績を見比べながら利率の高いものが選ばれています。
ここら辺までは、最近までの動きでした。
しかし、基金(投信)が株式で多く運用されている事実は、あまり一般市民の知るところでは無いようです。運用成績の良い基金(投信)は、ほとんどが株式での運用比率がうんと高いものです。一般市民は、固定金利商品に慣れきってしまって、基金(投信)もその一種だと錯覚しているようです。多くは銀行の窓口で取り扱われているため、比較的気楽に買える固い金融商品だと思われているのでしょう。
私が、中国A株に興味を持ち出すきっかけは、15、6年前の中国での株式ブームでした。当時は、猫も杓子も株に浮かれて、大金を1日に動かせる立場の一般投資家はVIPルームまで用意されて、株の売り買いに熱中しておりました。
私の見ていた当時のテレビ番組にも、現在劇にはよく株式のことがエピソードとして登場していました。が、大抵は一夜にして相場で大金をすって破産とか、公金を持ち逃げして株式に投資して逮捕とかいうものでした。それこそ札束が宙に舞ったり、ビルの上から降ってくるような場面が印象深くテレビ画面から写し出されていました。
こんな時代が、中国にも十数年前にすでにありました。
ところが、この度の再びの「株式投資過熱症候群」です。
中国の一般市民には、もう懲りたはずの株式投資だったはずです。
10%前後の高いGDPの伸びを伝えるニュースや、海外投資や貿易の伸びで好調な経済を年々謳歌するようになった中国経済、庶民にも大いに自信になっているようです。
上場企業の業績も、概ねこの所良好に推移しており、高配当も出しています。
にもかかわらず、ここ数年に亘る中国株式市場の低迷は、一体どーなっているのか。
私の中で、なぜ、なぜ、だらけ、なのでした。
そして、昨年末からの突然の株価急騰と株式市場の活況、連日メディアがこぞって株式市況の様子を詳細に解説付きで伝えるようになっています。
いつも手にする新聞夕刊紙面に株式個別銘柄の値動きを伝える紙面が加わり、何人かの中国人の友人達は時間になると車載ラジオのボリュームを上げて市況放送に釘づけになっています。午後3時になると必ず証券会社の営業マンに携帯をして保有株の終値をチェックしている長老も何人かいます。
しかし、私の経験した十数年前とは、今回はかなり様子が違っています。
ここのところに、私は興味を持っています。
2007/06/28
注)この記事は、過去のものからの再録の形で転載させていただいております。時事的に古い話題が取り上げられていますが、内容的には時間の風雪にも耐えられるものと思い、取り上げさせていただいております。
2012/11/11