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酒の道、食の道(金城拓)

第21回 おせち料理

あけましておめでとうございます。
今年も本コラムをご愛読いただけると幸いです。

さて、日本人でお正月といえば、
おせち料理が思い浮かびます。

最近ではデパートなどで出来合いのもが売っていたり、
中華風おせち、イタリアン風おせち、なんて物も売っています。

一般的なおせちの形式が出来上がったのは
江戸時代だそうです。
縁起の良い食材に当時の江戸の市井で
流行っていた語呂あわせが結びつき、
様々な料理、名称が生み出されたようです。

そのため、おせち料理の一つ一つの名前には
それぞれ新年にあたって様々な願いが込められています。

例えば家族みんながまめに(健康に)暮らせることを願った
「黒豆」、子孫繁栄を願う「数の子」、豊作を祈る「田作り」、
黄金にあやかる「栗きんとん」、喜ぶ、にかけた「昆布巻き」、
巻物に似た形から知識が増えることを願った「伊達巻き」など、
実に様々な形で幸福を願っていることが解ります。

単なる料理に一つ一つ意味を持たせ、
あるいは願いを表すための料理を創作する。

そしてそれらを食べる、ということは、
様々な願いを自らの中に取り入れる、
ということです。

単なる栄養補給ではなく、
一口一口が家族の健康と幸せを願う祈りへと繋がるところに
日本人が生み出した精神世界の奥深さを感じます。

それを考えると、いかに美味しく、
豪華に見えるとはいえ、
中華風おせちやイタリアンおせちは
どこか物足りなさを感じます。

今年あなたは、幾つの願いを
口にしましたか?

2006/01/04