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酒の道、食の道(金城拓)
第20回 蕎麦を打つ
今年の年越し蕎麦は自分で打とうと思い、
先日、二つの蕎麦打ち教室に参加してきました。
一つは築地蕎麦アカデミー。
プロを目指す人のための開業コースもある、
本格的な教室です。
私が参加したのは体験レッスンコースで
約3時間で蕎麦粉八割、小麦粉二割の
二八蕎麦を打つコースです。
蕎麦専門でやっているだけあって、設備は充実しています。
腰をかがめると腰に負担がかかるから、ということで作業台も
立って打ちやすい高さで作られています。
打つ分量は400g。その日の湿度から、
加える水の分量を計算します。
また、1mm〜3mmくらいまで
0.5mm単位で作られたプラスチックの板があり、
のしていく中で今どのくらいの太さなのかが
すぐに解る様になっています。
出来上がった蕎麦は持ち帰るのですが、
私たちが作っている間に講師の方が作られた
蕎麦を最後に試食します。
さすがにプロが作っただけあって、
腰があって非常に美味しい。
器も趣のある器を使用されてて、
目でも楽しめるようになっています。
家に帰って早速ゆでてみると、
ちゃんと繋がった蕎麦になっています。
切るのが下手なため、太さはまちまちですが、
乾麺や立ち食い蕎麦などとは
比べ物にならないほど美味しい蕎麦が
自宅で楽しめるのは実に幸せでした。
もう一つはNHK文化センターで行われた、
「年越し蕎麦を打つー生粉打ち」という教室です。
こちらは神楽坂にある「たかさご」というお蕎麦屋さんの
ご主人が講師を勤めます。
このお店はHiQコラムニストの古川修さんが
何度か取り上げられているので、ご存知の方もいるでしょう。
NHK文化センターの一室を使って行われるこの講座では、
普通の机を使うため、ちょっと腰が痛くなります。
道具も3〜4人で一セットを使いまわす形になります。
蕎麦粉十割の生粉打ちは繋がりにくくて
特に水加減が難しい、という話を聞いていたので、
どういう指導の仕方をするのだろう、と思って
耳を澄ませていると、
「水加減はですねぇ、適当です」
・・・は?
「様子を見ながら少しづつ加えてください」
え〜っと、そ、そんなんで出来るんですか?
・・・出来ました。
出来るもんなんですねぇ。
十割蕎麦が自分の手で打てたことに感動。
家に帰って茹でてみたところ、
そんなにブツブツ切れることもなく、
ちゃんと蕎麦として食べることが出来ました。
自宅で日本酒とあわせて蕎麦を手繰ることができる、
というのは実に幸せです。
この講座では年越し蕎麦用に350gの蕎麦粉を
渡してくれます。
この蕎麦粉はお店で自家製粉したもので、
北海道の農家と契約した蕎麦の実を使用しているそうです。
蕎麦粉のみの販売も行っていたので、
自宅での練習用に2kg買いました。
両方を比較して思ったことは
築地蕎麦アカデミーのほうは、本格的で、
たかさごのほうは、本質的である、ということ。
たかさごのほうは延しの作業を一部省略してましたが、
それは形をきれいにするためのもので、商売として
人前に出すことを考えなければ確かに必要な作業ではありません。
それよりも家庭で気軽に楽しめてる事に
主眼を置いているように思えます。
築地蕎麦アカデミーのほうは
開業コースがあることからも、
一つ一つの作業を論理的かつ丁寧に教えています。
ただしこちらは本格的な蕎麦を打てるようになるための
最初の一歩、といった様な位置づけに感じます。
学校ですから、当然その後何らかのコースに通ってくれたほうが
経営的には助かるわけです。
また、家で打つにはどうしたらいいか、ということに関しても、
築地蕎麦アカデミーのほうでは道具を買ってください、
ということになります。一番安いセットでも6万円くらいします。
たかさごのほうでは、たらいを綺麗に洗って使ってください、
とか、菜切り包丁で十分です、ということになります。
どちらがいいかは自分の目的や性格との兼ね合いもあるでしょう。
両方参加してみていい所取りをするのもありだと思います。
その後、2度ほど自宅で蕎麦を打ってみました。
1回目は水加減が少なめで、物凄い腰のあるものが、
2回目は水加減大目でやや柔らかめの物が。
毎回均質的なものは出来ませんが、とりあえず
蕎麦と呼べるものは出来るようになったので、
今年は自分の手打ち蕎麦で年が越せそうです。
最後になりましたが、
本年、当コラムを読んで下さいまして、
誠にありがとうございました。
来年も皆様に美味しい話を
お届けできるよう精進しますので、
今後もお付き合いいただけると幸いです。
それでは皆さん、良いお年を!
2005/12/31