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愛と情熱のファイナンシャル・プランニング(伊佐笑子)
第9回 元住宅営業マンの営業手法
いつだったか、元住宅メーカーの敏腕営業マンと
話をする機会があった。
かつて彼の所属していた支店の売り上げのほとんどは
自分が売っていた、と言っても決していいすぎではない、
と、豪語する彼に聞きたいことといえば
「なぜそんなに安くもない住宅を、
大量に売ることができたのか」である。
別に私はこれから住宅を売りたいと思っているわけではないが、
普通の営業マンとの違いはなんなのか
とても興味をそそられた。
しかし、一度会っただけでは
その営業手法の話には全く触れなかったのだ。
だってもうあなた、営業マンじゃないじゃない、
さっさと教えてくれたって何か減るものありますか?
と、喉まで出かかった言葉をぐっと飲み込み、
仕方なく次回以降のお楽しみ、とすることに。
幸い、その人とは別の用件でそれから1ヶ月近く
毎日のように顔を合わせていたので
いつか教えてくれるだろう、と
相手から話し始めるのを待つことにした。
自慢話はよく聞くけれど、その自慢話の種明かしは
人はなかなかしてくれないものである。
単なる自慢話を聞きたい人は誰もいない、
ということに早く気づかないのはなぜだろう。
ついにその日はやってきた。
もうすぐ会わなくなりますねぇと思い始めた
最後の週でした。
つまり、種明かしまでに約1ヶ月かかった、
というわけです。
僕が住宅を飛ぶように売ることができた理由は、
購入者のお金の問題に実に親身になって
相談してあげていたからなんです。
ようはこういうことだ。
購入者のほぼ99%は、ローンを組んで自宅を買う。
その頭金の問題や、ローンの組み方の提案、
銀行などからの借り入れの仕方、
それら全てのお金に関する問題を解決、或いは
安心できるようにサポートした、というわけだ。
別に、サブプライムローンを組ませたわけでは
ないようだし、今は結構、頭金ゼロでも購入できたりする。
住宅を購入したことがないからわからないが、
そのくらいのサポートは今の住宅メーカーでも
しているのではないのだろうか?
彼の黄金時代(バブル崩壊後)には
まだそこまで細かなサポートをする人がいなかったということか。
お金に余裕がある人だけを営業していては
No.1にはなれなかった、という。
住宅展示場に足を運ぶ人は、百貨店のウィンドウショッピングの
つもりの人はほぼいない。
「欲しい」という消費者の思いを「買える」に
変えるには、お金の面での安心が最初の関門だったのだ。
もちろん必要なのはそればかりでないだろう。
営業マンのその人柄もしかりだ。
本当は売れる営業の秘訣は「僕の人柄である」と言いたいところを
種明かししてくれた、くだんの彼には感謝しておきましょう。
なるほど、それじゃあFPである私も
住宅屋さんに行けば、上手な営業ができるかしら?
人柄よし、お金の知識よし、性格もいいしー、
な~んて自慢話をするようでは
普通に売れるものも売れなくなったりして・・・。
2007/08/20