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夢の上海(チャイひめ)
第39回 地に書を書く 地書
中国の朝というと、毛沢東の写真のある天安門広場の前を通る自転車ラッシュ、とか
おじいちゃんおばあちゃんが大勢で太極拳をしている、といったイメージがあると思います。
実際の中国はというと、おおむね皆さんのイメージ通りです。
中国のおじいちゃんおばあちゃんは、健康のため早起きして、
散歩したり、太極拳をしたり、詩吟を行ったり、体の「鍛錬」をしています。
「鍛錬」と聞くと、我々日本人は武者修行のような厳しいものをイメージしてしまいますが、
ここ中国ではもっと柔らかな語感で「体のためにいいことをする」といったニュアンスです。
その他、おじいちゃんおばあちゃんに人気のあるものに「地書」があります。
地面を紙とし、地に書を書くから、地書。
その際、墨汁を使うのではなく、代わりに水を使って書きます。
地書の醍醐味は何と言っても、大きな字が書けること。
大きな紙に大きな筆で書を書こうとすれば、コストがかかってしまいますが、
地書なら筆さえあれば、どこでもできます。
大きな字を書けば、それだけ体を大きく動かすので、体にもいい。
もちろん小筆で楽しんでも大丈夫。
普通の水を使うだけなので、環境に悪いということもない。
書く内容は、古人の言葉であったり、自作の詩であったり。
文化的素養を高めてくれる内容です。
地面の水はしばらくすると乾くため、地書はいわば一瞬の芸術。
あとに残らないことがかえって、良いものを書こうとする意欲をかき立てるそうです。
10年くらい前に北京のある公園でおじいさんのグループが始めたそうですが、
その手軽さ、たくさんの利点から、地書仲間が少しずつ増えていき、
今では全国に愛好家がいて、大会まで開かれるとか。
中国ならではの文化ということで外国人にも評判がよく、留学生のサークルもあるそうです。
地書、中国の伝統文化が素敵に生きていて、素晴らしいと思います。

成都市にある武候祠。武候祠とは諸葛孔明を祀っているところ。諸葛孔明は人気があるため、中国全土にはたくさんの武候祠がありますが、蜀の国のあった成都の武候祠はご本山ともいうべき場所です。
2006/11/14