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散歩しながら(ぼうちゃん)
第87回 傷と闇
誰でも心の傷というか、トラウマってありますよね。
そしてその傷のせいで体調が悪くなってしまいます。
とてもすごいショックを受けてしまうと
感情と記憶がバラバラになってしまい
パニック障害などになってしまったりします。
そして身体に出てしまう場合には、
自律神経系やアトピー、喘息、花粉症などに出ます。
それは、心の傷というのは
脳に傷が入ってしまうからなのですね。
脳の外傷です。
主にショックや恐怖で脳に傷がつき
記憶をつかさどる部分が萎縮してしまうようです。
そうすると記憶と感情の処理がうまくできなくなって
自律神経をつかさどる部分に影響してしまう。
ですから直接にはパニックや感情の麻痺、悪夢など
そして間接にはアトピー、喘息、花粉症、
それに頭痛や耳鳴り、低体温、冷え性、疲労感、
不眠症など健康に影響をおよぼしてしまうのです。
そしてそれらを治すには感情と記憶の整理が必要です。
薬は治療ではなく、症状を抑えるためのもののようです。
人間はもともと動物から進化した生き物なので、
一度恐怖を味わうと以後、
その恐怖を受けた出来事から逃れようとします。
本能ですね。
大脳で安全だと判断するよりも早く、
扁桃体というところが警報を鳴らすという仕組みらしいです。
この仕組みは原始時代には
人間が生き延びるためには不可欠でしたが、
現代社会では逆に人間関係を破綻させたり
生活を妨げたりしてしまうのです。
この二、三ヶ月の間に三人も
こんな症状の人と話しました。
ひとりは鬱の症状の女性でこの人は
家庭内暴力の中学生の息子に
土下座をさせられて
毎日頭を踏みつけられるそうです。
この女性は子供の頃
父親の暴力を長期間受けてきて
いまだに父親に恐怖感があります。
二人目は30歳の男性。
彼は高校時代に電車の中で頻繁に恐喝されました。
高校を中退していま引きこもっています。
三人目はトラウマが恐怖や驚きではなくて
喪失感というか燃え尽き症候群のようなものがあり、
色々聴いてみると
子供の頃に母親に死なれ
また青年の頃に恋人を亡くすという
不幸を経験していました。
かれらの心の傷・トラウマが身体に影響を与えています。
ここまで書いてふと思いついたのですが
すぐれた小説家というのは
人の心の傷や深い闇を
巧みな言葉使いで描き出し
我々に読ませる技を持ったひとなのかな。
ただし、傷や闇を自らも持っているか
強い想像力がないと
よいものは書けないだろうな
と思いました。
2011/10/21