転職をするなら遅くても四十まで。

三十代でなくては駄目だと
邱さんは云っています。

私の中学時代の同級生が
会社を辞めて蕎麦屋をやりたいという
話をしたとき

彼は五十になっていました。

邱さんの言葉が私の頭にありましたから
彼に忠告をしました。

しかし彼の意思は固く
三ヶ月後には退職すると言ってききません。

蕎麦を開店するといっても
その修業期間も必要であるし、

いくら彼が器用で
趣味として蕎麦を打つことが上手でも
商売にするとなれば話は違ってきます。

具体的な修業先もないということなので
たまたま私の知り合いに蕎麦の繁盛店の
主人がいましたので頼んでみました。

快く引き受けてくれたので
その店で修業をすることになりました。

一年の見習いをして
自分の店を出すのに
店舗はどうしたかというと

資金が少ないので
彼の住居を改装して使うことにしました。

それでも内装工事や台所改築、
食器や釜など揃えると
いくらかあった貯えは底をついたようです。

 

一年後にいよいよ
開店の運びとなるわけですが

店を始めると言うことはなかなか
大変なことだと
傍からみていて実感しました。

 

邱さんがよく飲食店は簡単に始められるが
潰れるのも早いと言っています。

それでは何故出すのかといえば
潰れるために出すのだと
冗談のような本当のことを言っています。

私の友人もそれから苦労が始まったのです。

2011/05/06