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散歩しながら(ぼうちゃん)

第41回 的を射る

那須与一の話。

ある武将が

琵琶法師の語るところの

那須与一が扇の的を射る段を聞き

涙を流しました。

 

一緒に聞いていた家来たちは驚き

勇気功名の面白い話に

何故涙を流されたかと

不審に思っていると言ったところ

 

武将は大変驚いたようすで

只今まで夫々を頼もしく思っていたが

今の一言で力を落とした。

 

たわけた者共であると怒ります。

那須与一が射った矢が

的に当たらなかったらどうしたか。

 

源平敵味方が鳴りを静めて

見物する中を射損じたら

 

馬上で腹を切って海に入ろうと

思い定めた与一の胸中を推察してみよ

 

これほどあはれなるものはないと

落涙したのだ。

 

 

こういう話は散歩しながら考えてみることにします。

 

武将の落涙に思いを馳せても

凡人の私にはいまひとつ分かりません。

 

小林秀雄がなぜこの文章を書いたか

すなわち武将の真心に

触れ得たたからだと思います。

 

 

武将は与一の姿に

自分の姿を映してみたのだろうし

他人は自分の鏡であると考えている。

 

他人の胸中を推察することなど

不可能なことであるから悩む。

 

自分の性質が気にかかるから

他人の心を推察しようとする気持ちがあり

その悩みがあると言ってよく

世間の通念しか映らない者には悩みはない。

 

小林秀雄はこのように解釈したのだろうと思います。

ウ-ムそういうことか、さすがです。

 

 

世間の通年、常識から逃れることは難しいですね。

 

誰もが型どうりにやって

その日その日を送っています

 

人の行動から

その人の心の中を推し量ることは可能ですが

つい世間的、常識的な

基準で判断してしまいます。

 

それが的外れなことになっていることが

よくあります。

散歩しながら考えました。

 

3・11の前と後では自分の中で

何かがはっきり変わりました。

集中しているがリラックス。

心身ともになれる気がする。

いやならなくては間に合わない。

2011/04/21