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散歩しながら(ぼうちゃん)

第9回 余裕と真剣

今から四半世紀も昔
日記にこう書いています。

三月七日。雪。
ノートも万年筆も買った。
万年筆はモンブラン、

あとは俳句をひねるだけ。

どうして私が三十代後半に
俳句を始める気になったかというと

ひょんなことから俳句の集まりを覗いたためです。

その頃患者のSさんが怪我をして通院していました。

Sさんは若手の俳人でした。

ある日Sさんが句会に私を誘い、
私がそれに参加し、ついつい
俳句に嵌ってしまったのです。

はじめて句会に顔を出してみると
そこには19の大学生から80の古書店主、

大学教授や高校の校長など
多士済々の人がいてみんな文学青年、老年でした。

その中の三人は中央の俳壇で活躍する人でした。

みんなそれぞれの俳句結社に属していて、
研究熱心で意欲あるもの同士が
結社を超えて集まって
勉強しようと始めた会でした。

そんな中に門外漢の私が入って
いきなり俳句など出来るのか

不安でしたが度胸を決めて入会しました。

そのときのノ-トには
もうインクの色も褪せていますが
しっかりとメモしています。

おそらくSさんからの受け売りだったでしょうが、
当時は意味が分からないのに書き留めています。

余裕と真剣。

肩肘を張らず心身の余裕を持ってする。

句作は冷やかしではいけない。

動作の具体的な形を詠むこと。

きれい事では駄目、真実感をよみ

写実で放り出したままではいけない。

瞬間をとらえ具体的で、

決して観念的抽象的にならぬこと

どんなことなのかよく理解できずに
書き残しておきましたが

何が幸いするか分かりません。

また何でもやっておくものだと思いました。

四半世紀むかしの俳句メモは
このコラムを書くヒントになっています。

2011/01/26