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中国株勝ったり負けたり(豊田大志)

第15回 市長の年収・文書配達員の年収

市長の年収を約2000万円とします。
しかし、累進税率の影響で手取り(所得税、住民税、
社会保険料控除等)は約1400万円程度になります。
社会的な体面やら次回の選挙を考慮すると、
コストが高く割りの合わないお仕事です。

さらにリスクが異常に高いのです。
塀の中に落ちないまでも、贈収賄事件等に
巻き込まれて、失業する方も少なくありません。
無事に長期政権を全うするのは、極めて
困難なことであると聞いております。

友人の父親は某市の市長でした。
用心深いと評判の方でした。
4年後に貰うはずの市長退職金を担保にして、
銀行融資を受けられたそうです。
それを毎度の選挙資金等としました。
政治資金の透明化には万全を期しました。
政敵には付け入るスキを与えませんでした。
そして長期政権を樹立しました。
ただし、「ご家族の生活は相当にきついものだった」
と聞いております。


一方では、ずいぶん前のことですが、
友人の文書配達員は面接のみで
市役所に採用されました。
その後、彼のカミさんも市民病院に、
面接のみで看護補助者として採用されました。
彼は一人娘が看護婦として、カミさんのいる
市民病院に採用されることになり大変喜びました。

後年、豪邸を建てた彼は、種明かしをしてくれました。
九州は宮崎県の山奥から、わけあって愛知県に来た彼は、
市役所の文書配達員として30年間勤めました。
「いつか、豪邸を建ててお家再興を果たすのが夢であった」と。

中途入職者である彼の戦略は
無試験で市役所に入ることでした。
次に、安定した収入を確保したうえで、公務員共済から
低利の融資を最大限引き出すことでした。
それで、無資産の文書配達員にも
豪邸を建てることが出来ました。

「家族3人で稼ぐと年収1600万円となり、
手取りで1400万円になる。これは、わが市の
市長の年収に見合うものだ」と。
「自分は選挙もないし、体面を考えなくても良い。
交際費が要らない。節約生活して市長よりも、
豪邸に住み、ずっと豊かな暮らしができるのだ」と。

この話は、私には眼からウロコで、改めて周りを
見渡してみました。すると、世帯収入が市長よりも、
手取りで多いと思われる職員がゴロゴロして
いるのに気が付きました。

家族の犠牲と、高いリスクと経済的コストを
承知で無際限の労働者になるため、手を挙げる
「首長さんは本当に偉い人なのだなあ」と
改めて思いました。
自分にはとても出来ることではありません。

2006/04/10