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知者不言、言者不知(村上悠悠)

第28回 無痛分娩

私は無痛分娩で出産した。

私の通院した病院が
たまたま無痛分娩をする病院だったからだ。

大学の附属病院であったから
患者は教材である。
私が最寄りのその病院で
通院、出産する、ということになった時に、夫は
「あの病院で大丈夫なのか?」と心配した。
というのも、そこは「お金さえあれば入学できる」
と言われている大学だったからだ。
夫のクラスメートでも、そういう子が入学したと言う。

そこの生え抜きの?先生が診てくれるというのなら、ちょっと心配。
でも、20年以上前は、系列の病院から教授たちは来ていた。
系列の大学病院の大学は、医学部の入学偏差では最難関である。
大学入学偏差値が高いことと、名医であることが関係あるか?
それはわからない。

けど、卑近な例では、漢字を誤読する総理は信頼され難いということがあるから
信頼を得られ易いかどうかは関わりがあるだろう。

私の担当医は当時、産科では日本で5指に入る、とまで言われた名医だった。
だから、芸能人や著名人でその病院で出産する人も多かった。

名医はどこが違うか?
私の体験では、「診察が痛くない」のである。
私は子宮内にポリープがあったらしい。
それは触れると痛かった。
別の医師の触診ではどの先生の時も痛かった。
それがベテランの女医さんであっても。
しかし、S先生の触診は全然痛く無い。しかし内部をきちんと診ている。
定期健診では、長々とは説明しないが、的確な説明があり、不安なく過ごせた。
そんなところだろうか。

教材であるから、医学生の診察も受ける。
お腹をさわって、赤ちゃんの位置を判断するというくらいなら
自分の判断と教授の見立てとを「当たった」と喜ぶのも微笑ましい。
しかし、教授の質問にちゃんと答えられないと患者としても不安になる。
患者もお産にあたって、少しは本を読んでいるので知識がある。
教授が診察途中に医学生に質問する。
あ、その答え、私にもわかる。
妊娠月齢がまだ少ないから胎児が小さすぎるからだ。

ところが医学生は曖昧な返事。
教授が声を荒げる、
「妊娠月齢がまだ進んで無いからだろう。
そんなこともなぜわからないんだ。
もう一度、教科書を最初から読み直しなさい。」
これくらい判れよ、と私も言いたかった。

帰宅して来た夫に
「それだけのことはある学生でした」と言うと
「だろう」と。
「でも、先生は良いよ。」

もちろん、分娩も臨床授業の一つである。
教材の自然に合わせていたら効率のよい授業にはならない。
授業に教材を合わせて揃えなければならない。
だから、十名前後の産婦が同じ日の同じくらいの頃合に
分娩になるように調整される。

無事に済んで良かった。
でも、無痛分娩だったので、私には忍耐力が未だもって無い。

2008/12/18