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知者不言、言者不知(村上悠悠)

第10回 小さなものにも有為転変

毎日のように近所のイトーヨーカ堂には
買い物に行っているけど、
いつも行くのは食品売り場であり
時々、日曜雑貨のフロアに行くだけだ。
家電製品のフロアに行くことは滅多にない。
最寄り駅から2つ目の駅に
大きなヨドバシカメラが出来てからは
なおさら行かなくなった。

探し物があって、久しぶりに行って見ると
フロアのレイアウトが変わっていた。
探しているものの型式番号を書いたメモを見せながら
店員に相談すると、連れて行かれた所には
1メートル四方くらいの壁面に
まるでフラッシュメモリのように
各メーカーの洗濯機の糸くずフィルタが
ズラーっと並んでいる。
壮観。
そうか、こんなに世間から要求されていたんだ、
と感慨深かった。

メモを見ながら丹念に探していた店員が
「ここにはありませんから、お取り寄せになりますね」

洗濯機の糸くずフィルタの寿命は
洗濯機よりもかなり短い。
毎日、強い水流を受け続けるので
プラスチックの部分からネットが取れてしまうのだ。
それでも以前は、100円くらいで買える
アイデア商品の浮き袋付きのネットを使えばなんとかなっていた。

しかし、家電は進化する。
あるきっかけで、各メーカーは使用水量を極力減らすことに
血道をあげることとなった。
阪神大震災である。
インフラの復活に時間がかかったため、
水がとても貴重だったからだ。

進化した洗濯機でも、糸くずフィルタまでは進化しなかった。
結果、浮き袋ネットは機能しなくなってしまった。
多分、水に浮かぶことによって働くものだったんだろう。
そこで、困った主婦はパーツ購入しなければならなくなった。
要求が多数出てくるようになって、
あの壮観ともいえる陳列コーナーが
出来上がったということだろう。

あのパーツを製造している工場は需要が多くなり
アイデア商品の方はお役御免状態ということとなる。
そんなところにも栄枯盛衰があるのだ。
邱先生のおっしゃるように、
世の中は変わっていくものなんだと
改めて思ったことでした。

2008/03/10