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宝船 巨龍にかける 夢無限大(森綾子)

第9回 なんてステキに大暴落

まさか嬉しいはずはありません。
含み益がどんどん減るのを見せつけられるのは。

 2004年春 金融引き締め

いわゆるマクロコントロール、景気過熱抑制策の実施です。
またも株価は大暴落。

ふと、私の脳裏にチャールズ・エリス著
『敗者のゲーム』の一節がよぎりました。

 「あなたが普通株を買う場合、
 配当を受け取る権利を買っているということを
 思い返して欲しい」

 「もしあなたが農場を経営しているのであれば、
 牛を買うとき、
 あなたの投資からより多くのミルクが取れるように、
 なるべく(牛を)安く買いたいと思うだろう」

そうだ、私はこの時を待っていたのだ。
去年のカモのカタキをとるチャンスではないか。

しかも暴落の原因は、企業業績が悪化したからではなく、
中国経済をソフトランディングさせる政策にあるという。
むしろこの事態に感謝すべきかも知れません。

 嗚呼、有り難き 中国政府の親心・・・

私は気を取り直してカモ猟に出かけました。
すると多種多様なカモが、いる、いる、いる。
不動産、石油、電力、港湾・・・目移りするほどいるのです。

ならば限りある資金で
「どのカモ」を「いくら」で買うかが問題です。

まず「どのカモ」を買うか。

この頃、私は、株主の視点に立って、
投資企業を厳選するように心がけていました。

株主・従業員・消費者。
必ずしも三者の利害が一致するわけではありません。

株主にとって良い企業とは、
人件費はもとより、あらゆるコストを抑え、
商品はできるだけ高く売り、

株主に利益を還元する企業です。

カルロス・ゴーン然り、ジャック・ウェルチ然り。
ダメ企業の中興の祖はみなこの点につき徹底しています。

私は株主になったことで、
はじめてこの点を明確に実感しつつ、
冷徹な眼差しで投資対象を評価するように心がけたのです。

次に「いくら」で買うかです。

あわてて買わなくても株価はもっと下がるかもしれません。
実際、カモは大きくなったり小さくなったりして
よく私を惑わせてくれました。
底値を狙えば買いそびれ、エイッと買うと下がるのです。
更なる暴落への恐怖心も鎌首をもたげてきます。
ナンピンは思いのほか難しいものです。

とはいえこの暴落中、ホンの少しだけ
ガス、電力、港湾株などを買い増すことができました。
これは前年の苦い経験の賜物でしょう。

あえて欲を言えばもっと果敢に買うべきだったこと。
いずれは500円、1000円になるであろう株です。
若干の悔いが残りましたが、
ナンピンできたことは、私にとって長足の進歩でした。

この金融引き締めによる大暴落。
それは精神的にはとても厳しいものでした。
しかし、見方を変えれば千載一遇のチャンス、
ステキな大暴落だったのです。

2005/10/10