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とことこ古都散歩(宮田琴)

第10回 近くにいても気付かないこと −深泥池−

今回ご紹介する場所は深泥池(みぞろがいけ)と言う場所です。
京都に住んだことのある人なら、「怖い話」や「肝試し」の舞台として
おなじみなのではないかと思います。

さて、この深泥池ですが、じつは地理学的、生物学的には
大変めずらしい場所なのです。
尾瀬など標高の高い場所や、北海道など日本北部地域にみられるような
ミズゴケ湿原が浮き島を形成しており
氷河期からの生き残ってきためずらしい植物などが自生しているのです。
♪はるかな尾瀬〜 と同じ景色がなんと京都市内にあるのです。
ちょっと驚きですよね。

車やバスに乗っているとぜんぜん分からないのですが
深泥池をふらりとあるいてみると、京都市内なのに
ここだけ、ぽっかりと異次元になっているような気さえします。
「怖い話」の舞台になっても不思議じゃないなーと感じます。

でも、よくみるとかわいらしい花をつけるジュンサイや
すいすい泳ぐカルガモ、東を仰げは雑木林につつまれたまあるい小山。
なんだか本能的に懐かしいと感じる景色です。

私は深泥池で生まれてはじめて「蒲」という植物が自生しているのを見ました。
因幡の白ウサギで有名なあの「ガマ」です。
茶色い穂にみえるのは実は花で、秋になるとこの穂から
フワフワと白い、たんぽぽの綿毛のようなものが実ります。
オオクニヌシのミコトが傷付いた白ウサギに
「蒲の穂にくるまるように」といったのはこのフワフワとした綿毛だったんだ!
とわかったときは何だか感激しました。

1988年には生物群集全体が国の天然記念物に指定されました。
でもそんな事を知っている京都市民は残念ながらあまり多くないと思います。

この池をこえると、私の住む岩倉というベッドタウンになります。
そのために池のまわりの道路を拡張したり宅地開発が行われたり
また、外来種の生物によって在来の生態系が圧迫されたり
池を巡る環境は悪くなる一方です。

私達のすぐそばにあるのに気が付かないことって
意外とたくさんあるのでしょう。
気が付かずにいる間に失われていくものがあるということを
忘れないでいたいものです。

場所:京都市北区上賀茂狭間町

最寄り駅:京都市営バス「深泥池」 京都バス「狭間町」

2005/10/25