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Cafe MIMIK(MIMIK)

第57回 回想のジャズ(1)

リクエストにお答えして、時々ジャズについて書いてみます。
ジャズについてもっと書くようにというリクエストを聞いた
のは1月24日でした。その日は、神戸で昼と夜に共に集まりがありました。
リクエストは昼の集まりで、このコラムを読んでくださる方の奥様を通じて
お聞きしました。
僕は、ジャズについて考えながら、夜の会場への道をあるいていました。
夜は、大学の卒業生の集まりでした。年齢も20代~70代まで。

会場は、先輩が経営するフレンチ・レストランでした。
その先輩は、レストランや農園など、幅広くビジネスを展開されている
方なのですが、宴も終盤に差し掛かった頃、先輩が、プロのジャズシンガーで
もあることがわかりました。
多くはないが、定期的にライブをしているそうです。

人生の深みにはまったような瞬間でした。
これだけビジネスを展開して、
まだジャズシンガーとしても活躍している人がいる。
レストランにはピアノもあったので、その場で、
「EVERYTHINGS HAPPENS TO ME」をリクエストしたのですが、
大学の仲間にはジャズシンガーであることを公表していない
らしく丁寧に断れましたが、またライブに行ったときに
リクエストすることにしました。
そのとき、ジャズ・シンガーである先輩と深く音楽については
話さなかったのですが、きっと、僕が感じた先輩の人生の深みは
ジャズがあたえた影響もあるのだとうなと思いました。

そう言えば、僕がジャズを聴き始めたのも、大学生の頃だなと思い
だしました。
僕がどうしてジャズを聴こうかと思ったのか
動機は思いだせないのですが、はじめて聴き、買ったアルバム
は思い出すことができます。
あれは、17年前ほどだったと思いますが、大学生協の本屋で
ジャズ評論家・後藤雅洋さんの「ジャズの名演・名盤 (講談社現代新書)」を
立ち読みしたことに始まりました。

何気なく開いたページが、ビル・エバンスについて書かれたページでした。
ビル・エバンスは、1950年代以降のジャズを代表するピアニストです。
黒人全盛のジャズ界にあって、ファンキーではなくリリシズムで芸術を
展開した音楽家です。今日よく目にするピアノ、ベース、ドラムという
ピアノ・トリオという演奏スタイルを確立した人です。
僕は、後藤さんの文章にインスピレーションを得て、すぐにCDを
買いにいきました。

確か、新宿の紀ノ国屋本店の中にあるCDショップだったと思います。
買ったのは、ビル・エバンス・トリオ「EMPATHY」(VERVE)
というマイナーなアルバムでした。
ジャズにも「名盤」と言われる作品群があり、はじめきくべきアルバムは
名盤をというのが普通でした。
この買い物が、今の僕を運命づけました。ピアノ・ジャズが好きな人
はわかるのですが、はじめて買うのに、これは買わないだろういうアルバムです。
ビル・エバンス・トリオなら「ワルツ・フォー・デビー」とか他にも最高傑作が
あるだろうと・・・。その時は、CDの安さに負けたんですね。
以来、中国株でも同じをことを繰り返していますが。

でも、あれから17年ほど、このアルバムを聴いているのですが、少しも飽きる
ことがありません。
最初に何を聴くかというのは重要な選択です。その後の人生を変えます。
後に、これはどんなことにでも言えることがわかりました。
もちろん株の銘柄選択でも重要であることがわかりました。

例えば、はじめてのアルバムがソニー・ロリンズやジョン・コルトレーンだと
今頃どんな人生だったのだろうと思ってしまいます。

2009/01/25