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お鍋の中と外(榑林未奈子)

第3回 進化する餃子《実践編》

前回から続きまして、我が家の餃子の作り方を紹介いたします。
分量をきちんと明らかにしたレシピを作るのが苦手なもので、
レシピというよりは、特徴になりました。以下のとおりです。

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その1.乾物をたくさん入れる。
ひもの、ではなくかんぶつです。
具体的には、干し椎茸・干し貝柱・干し海老などです。
戻るのに時間がかかりますから、「餃子を作りたい!」と思った時には、
まず乾物を戻すことから始めます。
戻し汁は、その2でお肉に加水する際のだいじな材料になりますから
とっておきましょう。
すこし温めると、冷たいお肉をこねる手のつらさがやわらぎます。

その2.肉はしっかりこねて、加水をする。
野菜の水分をしぼったぶん、肉にはたっぷりと水気を足します。
後述する乾物の戻し汁を使うと、一石二鳥です。
塩・オイスターソース・醤油・ニョクマム・中華だし等をこね混ぜて、
この段階で味をつけます。
野菜に味をつけると、水が出てしまうからです。

その3.ベースとなる野菜の水気はしっかりしぼる。
ゆでても蒸しても、電子レンジでもいいのですが、加熱することにより
刻む時に楽になりますし、青くささが抜けて、舌ざわりも良くなります。
キャベツより白菜の方がいいようです。
ニラ・大葉・ニンニク・ショウガ・キノコ類は加熱しません。
エノキは1回刻むだけでみじん切りになってくれる優れものです。
干し椎茸とは別に、生の椎茸を大ぶりの1cm角に切って入れると、
歯ごたえが増して満足感が出ます。

その4.厚い皮を使う。
スーパーではなぜか薄皮が主流ですが、厚い皮の方が、
パリッと焼きあがります。
なんといっても翌日、冷めた時のおいしさが違います。
昨年、横浜中華街にある「永楽製麺所」というお店の皮を使い始めて、
世界が変わりました。薄皮の2枚分くらいの分厚さで、よく伸びてくれて、
包みやすさもいうことありません。
手に入らない時には、水餃子用の皮が良いようです。
(薄皮を2枚重ねで使うという荒技を試してみたこともありましたが
あまり具合が良くありませんでした)

焼いている間にフタを取って見るとわかりますが、餃子は火が通ってくると、
プクプクにふくらみます。まんまるにふくれた冬の雀のようで、とても愛らしい。
これはタネからあふれ出た肉汁が、大量の湯気になるからです。
薄い皮では、この肉汁を受け止めきれず、時間が経つとベショベショになり、
はなはだしきは外に漏れ出すことも……。
その点、厚い皮は、おいしい肉汁をのがさずホールドして
冷めゆく間に吸い込んでくれます。

その5.焼く際、さし水に味をつける。
フライパンに餃子を並べて、お水をさして蒸し焼きにしますが
この水を、中華だしやお塩で味を薄くつけたスープに変えます。
(中華だしはお湯で溶きます)
焼きながら、全体にうっすらと味をまとわせることで、皮に旨味がついて、
焼き目もきれいに仕上がります。

餃子本体に味がついていると、タレをビショビショにつける必要が
なくなりますから、底面のサクサク感を損なうことなく口に入れられます。
黒酢だけで食べるのもさっぱりしていて良いですし、
からしや柚子こしょうを軽くなすって食べるのもおすすめです。

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以上、昨年までに到達した、我が家の餃子の報告でした。

最近は、基本の餃子のタネに、二つ割りにしたプチトマトや
加熱用の生牡蠣を入れたりして、変わり餃子に進んでいます。

餃子は今年もまだまだ進化を続けそうです。

2012/01/15