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道連れは無敵の相棒(湖津園立治)

第20回 蒼い時 −6−

春節が近づいている
街はにわかに慌ただしくなってきたようだ
年末のセールが盛んで、酒の特売もやっている
これを機に買い込んでおくか
それにしても花火や爆竹をたくさん買い込む人が多い
カウントダウンの日が怖いくらいだ



日本の大学は欧米と違って
一度、社会人になってから
再び大学に戻って研究する人はまだまだ珍しい
私が晴れて派遣研修生として研究室を訪れた時
ちょっと年を食った男が来たものだから
4年生達はかなり戸惑っていた
卒業さえできればいいと思っている彼らにしてみれば
社会人になってから勉強しに大学へ戻ってくることが
不思議でならなかったようだ
無理もない、勉強させられているうちは
勉強できることの喜びは分からないだろう
(私も学生の時分はお世辞にもいい学生とは言えなかった)
でも人は変わる
社会に出て様々な問題に直面すると
はじめていろいろなことが分かってくるからだ

データ解析には統計の知識が必要ということで
大学一年生が使う教科書の勉強から始めた
錆び付いた頭に鞭打って数学を勉強するのは大変な苦労を強いられたが
弱音を吐くわけにはいかなかった
「水需要予測の研究をして水運用システムの更新工事に研究成果を生かします」
と大見得切った手前、何が何でも結果を出さなければならなかったのだ
規定では週に2日出張扱いで大学に通って研究するというものだったが
ほとんど毎日仕事の帰りにそのまま大学へ行ったし
休みの日にも研究室に入り浸っていた
ゼミの前日にはよく徹夜したし、終バスに乗り遅れて
そのまま研究室に泊まり込んだ日も数え切れない

「データ解析の専門家は解析手法についてよく知っている
しかし、闇雲にデータをいじってみても何も出てこない
何を調べたいのか、何をはっきりさせたいのかは、当事者にしか分からない
だから常日頃感じていることや疑問に思うことなど
気が付いた時にメモしておくようにするとよい
それは第一線で働いている人にしか分からないことだから」
指導教授はよくそんなことを私に話してくれた
水の需要は、天候や気温、曜日などによって
変化していることが経験上分かっている
影響を与える要素が複数ある時には
「多変量解析」というデータ解析手法を用いる
必要なデータを揃えて解析を行ったところ
ものの見事に高い相関関係を示す結果が得られた
「これならいける!」
確かな手応えを掴んだのだ

年末セール

年末セール

2006/01/25