戸田ゼミ通信アーカイブ トップページ >> 道連れは無敵の相棒(湖津園立治)

道連れは無敵の相棒(湖津園立治)

第16回 蒼い時 −2−

12月3日、中国はもの凄い寒波に見舞われた
上海の最低気温−5℃
急激な気候の変化についていけなかったのか
体調を崩して入院する羽目になってしまった
大陸の生活はまことに厳しい



私が県職員に採用された当時は
バブル崩壊が叫ばれはじめた頃で
民間企業がこぞって新規採用を控えはじめていた
良い人材を確保できると考えたかどうかは知らないが
県は採用を増やしたので、私の同期は多かった
新規採用職員といっても
企業からの転職者が多かったので
年齢層は意外に広かった
転職者が皆一様に言うことは
「民間の方が給料もボーナスもいいけど
残業ばかりで使う暇がない。
もっとゆとりのある人間らしい生活がしたい。」
というもので、日立やパイオニア、ビクターなどの
有名企業を辞めて転職してきた人達が話してくれた
そんな話をよく聞いていたので
公務員になれて本当によかったなと
はじめのうちは呑気に思っていたのだった

県の企業庁というのは
治水事業、水道事業、電気事業の3つを柱としている
治水事業は、主にダムの運用と維持管理業務をおこなっている
水道事業は、取水から一般家庭の配水まで、一貫した上水道事業をおこなっている
電気事業は、水力発電所から発電される電気を東京電力に売電している

自治体の発電事業は公営電気事業と呼ばれているが
この公営電気事業は、売電事業の自由化に伴い
昨今、消えゆく運命にあると言われている
元々規模が小さく、しかも役所のやる仕事なので効率が悪い
完全自由化されれば立ちゆかなくなるのは無理もない
電力の不足していた時代にはじめられた事業なので
発電所の建設当時は大きな役割を担っていたのだろうが
時代が変わって、今ではお荷物になってしまっている

他の先進諸国に比べて
日本の公共料金が高いことはよく指摘されていることである
独占事業の宿命か、水道事業に関しても
いっそうの企業努力が求められて久しい
景気のいい時代には問題にならなかったようだが
水の需要増を見込んでの大型施設建設の予算要求など
理屈に合わない話は、もやは通るまい
最近の郵政事業のように民営化論などは無かったが
民間活力の導入が提唱されていて
業務委託の方法などが検討されていた

公務員にはリストラが無く
入ってしまえば後は定年まで安泰と誰もが思っているし
待遇の良さを周りの人間から羨ましがられもするが
現実はそんなに甘くなかったのである
世の中の役に立ちたいと志を掲げてみるものの
斜陽産業に身を置く者の悲哀のようなものを感じ始めていた



12月に入ってあちこちでクリスマスツリーを見かけるようになった
キリスト教徒でもないのにお祭りを生活に取り入れるところは
日本も中国もそう変わりがないようである
毎日震えるような寒さの日が続くが
しばし、きれいに飾り付けられたツリーでも眺めることにしよう

近所のスーパーのツリー

近所のスーパーのツリー

2005/12/10