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道連れは無敵の相棒(湖津園立治)

第15回 蒼い時

そもそも何故県職員になったのか
それは友人の言葉に触発されたからだった

大学で化学を専攻していた彼は
企業には就職したいくないと言った
彼曰く、企業は利益を追求するあまり
地球環境によくないものを生産し続けていく
汚染物質の拡散を防ぐには
公的機関のチェックが必要とのこと
そのために自治体に就職して環境保護の仕事がしたいという

有名な一流の大企業に、就職ならぬ就社をせんがため
躍起になっている同学の輩をよそに
化学の社会貢献に対する意義を唱える彼は
私に少なからず衝撃を与えた
もっともその彼はその後自治体には就職せず大学に残り
今でもメルボルン大学で研究活動をおこなっているのだが

私は化学の専攻ではないが、このIT時代である
情報化の社会インフラを整備する仕事ができるかも知れない
彼と同様、意義ある仕事がしてみたいと考えて
公務員試験を受けた
しかし、なんとか県職員になれたものの
時代はあっという間に変わってしまった

バブル崩壊後、日本経済の成長神話は終わり
デフレ、大リストラ時代が幕を開けた
景気の下支えと称して、国債を乱発
無駄な公共事業が世間の非難の的となった
増え続ける財政赤字、続発する贈収賄事件
これじゃ、社会貢献どころか経済の足を引っ張る悪者扱いじゃないか

青臭い青年の考えることほど、現実は単純ではなかった
「こんな時代に公務員になれて良かったね」
よくそんなことを言われたものだが
「お陰様で」と笑顔で答えるものの
胸中ではちっとも嬉しくない

公務員に対する風当たりは強くなる一方だが
組織や業務の改革は一向に進まない
これにはいろいろと訳があるのだが
自分にできることはなんだろうと
考えるようになっていった

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キャンパス

2005/11/28