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道連れは無敵の相棒(湖津園立治)

第10回 紅白黄、米

所変われば品変わる
当たり前の話だが、住む場所が違えば
気候も水も食べ物も同じではない

日本から上海に来て
はじめに困ったことは水だった
慢性的な下痢と時々襲いかかる腹痛に閉口した
日本は島国ゆえ軟水で、中国は大陸なので硬水だ
体が慣れるまで1ヶ月はかかっただろうか

食材も変わっている
蟹はもちろんだが蛙やスッポンもたくさん売っている
牛肉は日本と比べて安いところがいいのだが
固くてあまり美味しくない

果物の形がまた奇妙だ
味は日本の丸いのと同じなのに
洋梨のような形をしている梨があったり
平べったい桃や柿がある
味は結構いけるが剥きづらい(笑)

料理は大変美味しいが
中国には旨い酒が無いと聞いていたので
酒好きには辛いところだ

若い時は馬鹿みたいによく酒を飲んだ
真夏の夜勤明けではクーラーのない部屋が寝苦しい
寝酒に安い焼酎をよく飲んだものだった

酔っぱらった時の珍妙なエピソードも事欠かない
気がついたら見たことも聞いたこともない駅のベンチで寝ていたり
駅の階段の上から下まで転げ落ちたり
自動改札機にやおら財布から小銭を取り出して
一生懸命入れようとしたり.....
思考回路が壊れて自動券売機と自動改札機を混同したのだろう(笑)
しかし、記憶がなくなっているのに
どういう訳かいつも家に帰り着いていた
我ながら大したものだ(笑)

食事会で女の子達に酒を飲ませるためにはどうしたらよいか考えた揚げ句
カクテルを作ることを思いつき、研究と称してこれまた
ウォッカ、ジン、ラム、テキーラをベースにした
自分で作ったへんてこなカクテルを片っ端から飲んでいった
カンパリ、パッソア、キュラソーなどリキュール類も
種類が豊富で、はじめは飽きることがなかったが
カクテルというものは、所詮、不味い酒をましになるよう調えているに過ぎないから
邪道だと思うようになり、すっかり興味は冷めてしまった
旨い酒に小細工は要らないのだ
その後は、男の酒に憧れて荒っぽいバーボンを飲んでいた時期があった
これまた何本空けたか知れない
しかし、粋がったところで大して酒に強くはないので
飲める量はたかが知れている
それに年とともに飲める量は減ってくる
一生の間に飲める量が限られているなら
少しでも旨い酒を飲もうと思って
スコッチのシングルモルトを飲むようになった

だがそれも昔の話
上海に来てからは酒の探求はもう止めるつもりだった
中国で旨い酒は期待できないし
そもそも酒を飲みに来ている訳じゃないので
それでよかったのだ.....

ところが、旨い酒に出会ってしまったのだ
「禾城老酒」は口当たりが柔らかく味は口の中で豊かに広がる
やはり中国には中国の旨い酒があったのだ

中国産の酒は大きく分けて2種類ある
蒸留酒の白酒(パイジォウ)、これは無色透明の酒
醸造酒の黄酒(フォアンジォウ)、瓶で熟成させる褐色の酒で
老酒(ラオジォウ)ともいう、紹興酒もこの一種
その他、ワインは紅酒(ホンジォウ)と呼ばれている、赤でも白でも紅酒だ
ちなみに日本酒のことは米酒(ミイジォウ)と言うらしい

スーパーで買った白酒ははっきり言って不味い
しかし、探せば旨い白酒もきっとあるのだろう
これから中国での酒の探求がはじまる

〜天高く、馬肥ゆる秋〜

今宵もまた酔っぱらいが一人
上海で酔いつぶれた

老酒.JPG

2005/10/17