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丘の上から(小日向次郎)

第73回 静かな夜に思う「豊かさ」

もうすぐ2011年が終わろうとしています。

振り返ると3月11日に起きた東日本大震災、
タイの洪水や世界に起きる金融危機などのニュースが
印象的だったと思います。

反面なでしこジャパンのワールドカップ優勝など
明るいニュースも多々ありました。

先月、新婚旅行で来日されたブータン国王夫妻。

国王が国会の衆参両国会議員を前に13分間に渡って
我々日本国民へ日本で起きた未曾有の大震災に対し
お見舞いと励ましのお言葉を述べられたのは記憶に新しいこと。

その内容が本当に印象的だったので、
ブータンという国に対して興味を持ちました。

ブータンは地理的に言えばインドと中国に挟まれた
小さな山岳国家です。

ブータン王国が国民総幸福量
Gross National Happinessを
国家政策の根幹としていることは聞いていましたが
国王の来日までそれほど深く考えたことはありませんでした。

Wikipediaによると国民総幸福量Gross National Happinessは
前ブータン国王が「国民全体の幸福度」を示す“尺度”として
提唱したものです。

金銭的・物質的豊かさを目指すのではなく、精神的な豊かさ、
つまり幸福を目指すべきだとする
多分にチベット仏教の考えによるものとされています。

他者とのつながり、自由な時間、自然とのふれあいを
豊かな社会を作る大切な要素としているのです。

国民総幸福量の測り方がどんなものかよくわからないのですが
基本的には「その国に住んで私は幸せである」と感じること。

これによると、スウェーデン、フィンランドなどの北欧諸国や
ブータンなどが国民総幸福量の上位国に入っています。

これに対し、国民総幸福量に関し日本は先進国中で
最下位とのことです。

確かに社会を見渡せば、環境破壊やうつ病などがより深刻な問題として
クローズアップされています。

アメリカやイギリスで公共政策や経済学を学んできた自分には
国民総生産(Gross National Product)が豊かさの指標だと信じ、
それを学問の基本としてきました。

ブータン前国王が国民総幸福量の尺度を提唱したのが1972年
考えてみると同じ時期にベトナムは世界で一番豊かとされていた
アメリカを相手に戦争を行い、その後独自の成長を展開。

その独自の豊かさに関心を持つ人も多いのではないでしょうか。 

例え一人平均のGDPが高く世界第三位の国民総生産がある
日本国に住んでいるから幸せと感じる人が多いとは言えない・・・、

公共政策やマクロ・マイクロ経済を考える中で、
もしかすると「豊かさ」に対する考え方の転換を
迫られているかもしれません。 

他者とのつながり、自由な時間、自然とのふれあいを
大切に感じながら「豊かな」新しい年を迎えたいと思います。

2011/12/25