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中国名言と株式紀行(小林 章)

第87回 中国・天津から/中国株日記 (42)

【NO.43】中国、天津から(6)
株式投資は、誰もが知るように「安く買って、高く売る」ことができれば、必ず儲けることができます。

株を「安く買う」というのは、その銘柄の上場来安値を下回る株価で購入してしまえば、ほぼ最高の仕込みができたことになります。
すなわち「細工(さいく)は流流仕上げを御覧(ごろう)じろ」ということになり、ほぼ勝利を手中に収めたようなものです。
また、「高く売る」ということも、下値よりも高ければどこで売ってもかまわないのでしょうが、価値の最大化を狙うなら上場来の最高値を上回る価格で売り抜けできれば、文句なしに「株で儲けた」ことになるでしょう。

しかし、そんな幸運には、滅多なことでは、万に一つも巡り会うことはない、と言えます。
では、どうやって株の「安値」を知り、タイミング良く投資できて、どうやって上手く「高値」に遭遇し、持ち株を首尾よく売りさばけるものでしょうか。

「株のことなら株価に聞け」と言います。
本当に将来有望な上場企業の株が、いくら相場の地合いが悪いからと言って、上場来の最安値も割り込むような事態を想定できるものでしょうか。
そんな株は、間違いなく「おんぼろ株」に決まっています。
「安く買う」という前提が成り立たないのであれば、「高く売る」という段階へは一歩も進むことはできません。

ひとは、所詮「高く売る」ためには、どこかの段階で、なにがしかの値段で株を「買う」しかないのです。安かったのかどうかは、買った後になってみなければ分かるものではありません。

仮に、不覚にも、安く買うどころか、比較的高値のところで拾ってしまった場合、諦めて損切って初めからやり直すべきなのでしょうか。しかも、往々にして株価は連日じりじりと下げ続け「買った後が安い」という状態になります。

そんな状態を打開する方法はないわけでもありません。
せっかく思い込んで「買い」を入れたのだし、首尾良く売りを拾って相思相愛で「購入」成立することもできたのですから。
その方法というのが「ナンピン」です。
自分の購入した株価より、大きく下げたときに、思い切って、他の銘柄の株も買いたい所を、忍の一字で諦め、まっしぐらに買い進むのです。
また、こうした事態での「ナンピン」を飽くことなく継続することで、持ち株の平均購入単価を限りなく上場来安値に近づけていくことはできます。
なにしろ冒頭でも申しましたように、株は「安く買う」ことが、儲ける前提になります。
しかも株を「安く」仕入れる部分にのみ、「ナンピン」という技巧(技法)が生かせるわけです。
唯一、自分から株について、若干のコントロールの余地が残されているのが「安く買う」という分野なのです。

もしも、市場環境の好転により、市場が活性化し全体の株価が高騰を始めた時に、その売却時差益が一気に膨らむ可能性があります。
市場の下落時に「ナンピン」を入れてまで、購入を重ねてきた株銘柄は、往々にして人気の高嶺の花であったりします。下がるときは思うように下がりませんが、上がるときは「高い株ほどよく上がる」といわれるとおり株価のパフォーマンスも期待以上に良いものです。

もう一つ、この株はと思って買ってしまったが、後で間違いに気づく場合もよくあることです。ほんとは、頂けないケースです。事前調査など準備不足は否めませんから、こうしたポカが続く場合は、株式投資自体を潔く残念すべきかもしれませんが。
こうした場合は、思い切ってリセットをするために「損切り(ロスカット)」という手があります。

私は、天津にいるときは、株に関しては90%以上の力を株購入後の安値補強策である「ナンピン」買いに惜しみなく注いで参りました。
従って、一本調子の上昇相場の時には、本業の仕事に邁進し、なるべく株価から遠ざかるようにしていましたし、時間があって証券会社に行くときも遠巻きに股民と呼ばれる人々の様子を眺めたり、店内の大きな液晶の株価ボードの赤い文字をぼんやり見上げてから、端末の近くで手持ちの時価総額を確認したり、隣人の持ち株や売り買いの様子を横から盗み見る程度にしていました。
 証券会社の入り口付近には、基金(投信)の勧誘員や相場指南の予想屋の若い男女の営業マンが派手なビラ配りをしています。また、たまに上場企業の株価データブックや投資指南書を格安で販売する人もいます。値切れば、もともと65元定価のものを、15元程度で販売していたものを10元に負けてくれたりします。こうした基礎データ本などの貴重な情報源は、即ゲットしていました。
 証券新聞は週1で土曜日の朝には新聞亭で販売しますから、1紙2元で「大衆証券報」や「上海証券報」の2紙程度を購入していました。

株を「安値で買う」と「ナンピン」の話をしたついでに、実は中国株によく見られることですが、期末決算後におこなわれる株主への無償による株式配当(株配)についても触れておきます。
中国株では、株主への配当には、大きく分けると現金配当と株式配当があります。
たとえば「10股派現5元送5股转増5股」といった配当案が示されることがあります。
この意味は、10株当たり現金配当金が5元(現金配当には「派」)、更に株式配当で5株の無償株(無償株配当には「送」)と5株の無償の増資による株式配当(無償の増資による株配当には「转増」)を実施するという意味となります。

仮に権利日に株価10元の終値を付けた株に、無償の10株当たり10株の株式配当が実施されますと、翌日の取引開始時の株価は1/2の株価の5元からスタートすることとなります。
さらに、仮に1000株の持ち株があった人は、1000株が無償株として持ち株に加えられることになりますが、同時に持ち株の平均単価も10元だった人は、
(10元×1000株)÷(1000株+1000株)=5元にまで平均購入額を切り下げることができます。
これで、労せずして「安く買う」ための平均購入単価を大幅に下げることに成功したことになります。しかも、現金配当が増える持ち株数をも2倍に増加することができました。
こういう配当案が出ると、本当に株式投資をやっていて報われたと感じます。

また、購入平均単価がナンピン買いで下がっていけば、投資金額に対する期末での株主現金配当利回り率も必然的に上がっていくことになります。
株式投資の妙味は、実は株価高騰時のキャピタルゲインとインカムゲインの二重の収益増の相乗効果が期待できる点にあります。

こうした株主に多く報いてくれる上場企業が中国株に多くありますし、増収増益を何期も続けるような優良企業には、決算ごとに毎期毎期無償株配を繰り返す企業傾向が見て取れるのです。
しかも、こうした企業の場合、人気がありますし、比較的業績に将来不安がありませんから、一旦半値に下がった株価は、3ヶ月後の権利日までに配当の権利を手にしたいというゲンキンな股民も加わって、じりじりスルスルと以前の株価水準を追いかけるように上がっていきます。

中国株、本当にいいぞ。君はよーく頑張ってくれてるね。

2010/08/23

 

注)この記事は、過去のものからの再録の形で転載させていただいております。時事的に古い話題が取り上げられていますが、内容的には時間の風雪にも耐えられるものと思い、取り上げさせていただいております。
 

2013/04/20