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中国名言と株式紀行(小林 章)

第45回 中国・天津にて/中国株日記 (21)

【NO.22】中国、天津にて(21)
当日記も、20回以上を数えることになりました。
これもひとえに、熱心な読者の方々の後押しが、記述の支えとなっています。今後とも、よろしくお願い致します。

さて、中国、天津もすっかり秋らしくなっており、夕暮れ時は、ひときわ人恋しさを覚えるほどで、つい知人に携帯を入れ食事に誘って盛り上がりたい気分にさせます。

中国本土投資家の「香港株への直接投資解禁」の続報です。先月20日の政府発表から、実施情報は錯綜しておりますが、この事を捉えても、本土人や香港関係者の関心の高さを証明しております。

この「香港株への直接投資」は、中国ではさっそく「港股直通車」と名付けられました(「港」は香港、「股」は株式の意味)。テスト地区となった天津濱海新区の中国銀行支店には、翌21日より電話での受付を開始し、全国からの予約申請が殺到、22日10時30分迄に1万人もの予約者があった、と報道されています。
また、香港に近接する深圳市でも、予約申し込み者が1万人に達し、中国銀行深圳分行では今月1日に開いた定員300人の説明会に1000人以上が押し寄せたとのことです。

米モルガンスタンレーのアナリストは「1年間に500億から1000億米ドルの本土資金が、香港に流入する」と予測している、そうです。
また、交通銀行傘下の交銀国際は、香港株式市場の時価総額の5%に相当する「約8000億元の本土マネーが香港に流入する」「さらに、ファンド資金からも約6000億元が香港株へ向かう」と予想しています。

予想はあくまでも予想ですが、受け入れ先の香港交易所側も、新たに1300万香港ドルを投じて取引システムの強化に乗り出すと、発表しています。
新たな投資により、取引最大処理能力は、1日当たり400万件に向上する見込みだ、といいます(現在の最大処理能力150万件の約2.6倍以上)。

さて、ここで注目されるのが、この多額の本土マネーはどの香港株銘柄に向かうか、ということです。

大方の予想は、本土人にも馴染みのある中国株、即ちH株やレッドチップと言われる株銘柄に、まず投資されるだろうということです。

特に大注目なのは、H株で本土A株同時上場の銘柄です。A株価に比べると、同一権利の株ですが、いずれも割安感があります。
9月6日現在で、AH同時上場銘柄は45銘柄あり、70%前後の価格乖離のある銘柄も9銘柄、50%前後が更に21銘柄も存在しています。ここら辺が先ず狙い目でしょう。

更には、香港ハンセン優良銘柄や中国関連中小銘柄にも、いずれ恩恵が及ぶものと思われます。
いずれにしても、仕掛けは、早いうちが良いでしょうね。

9月3日付の中国紙「明報」の報道によれば、広東省珠海市の九洲税関では、違法な香港ドルの海外持ち出しが急増している、とのことでした。
原因は、中国本土の個人による香港株投資の正式解禁を目前に控え「先回り」しようとする動きが背景にある、と指摘しています。
2007/09/10

[コメント]①
いつも楽しみに読ませていただいております。
中国からの生の声を伝えていただいてとても感謝しています。

香港株への直接投資は、中国本土でかなり注目されているようですね。
本土からの直接投資による株価上昇の恩恵がどの程度かはかることは難しいと思いますが、ぜひ恩恵に預かりたいものです。

ところで先日の投資信託が中国でも人気だという記事とあわせてお聞きしたいのですが、中国国内で一般に販売されている投資信託は、H株に対するものというのは少ないのでしょうか?

直接投資できない国民も間接的に投資できる状態なら早めにその影響がでそうな気がしたもので。

[コメントへの返答]
いつも、コメントありがとう御座います。

今回は、中国の投資信託についてのご質問ですが、現在中国国内(本土)では、政府に資格を認められた銀行などの機関投資家に、海外市場への投資を一定枠で認めています(QDII制度と言います)。

現在、具体的に言うと、銀行19行に148億米ドル、保険会社4社に52億米ドル、投資信託会社1社に5億米ドルの投資枠が認められています。

この投資枠のうち、実際に投資される資金の50%迄を海外の株式で、残りを海外債券などの固定利回り商品で運用することを義務づけています。

今年5月29日に中国工商銀行が、初めて香港株に投資する、このQDII商品(国内向け投信商品、「東方之珠」という基金名)の第1段を銀行窓口で予約販売始めました。投資する香港株の内訳はH株やレッドチップ株などです。
調達資金総額は44億5千万元(約712億円)でしたが、1ヶ月後の6月29日には完売した、そうです。なかなかの人気です。

その後、こうしたQDII商品は続々販売されていますが、今回の「港股直通車」と呼称される香港株への直接投資解禁と比べて、個人が購入乃至投資出来る額は、QDII商品の方は年間10万米ドル迄なのに対して、「直通車」の方は投資額の制限が設けられていない点が、大きく異なります。

いずれも、今年になってからの大きな話題であり、香港ではQDII商品(投信商品)からの香港株への投資の話題で、5月以降盛り上がり、更に今回の「直通車」報道で、香港は連日かなり熱い報道ぶりと、株式市場の活況が進行中です(その証拠に、この所の日々の株式売買高推移を調べてみて下さい)。

今回の件で中国政府は、香港市場を重視している、との強烈なメッセージになったのです。

中国政府にしても、膨大な外貨準備高に見られるように、貿易黒字や海外からの投資による外貨の過剰な流入を放置し、国内に溜め込むばかりであれば、いずれその裏付けとしてそれに見合った人民元を大量に印刷し続けなければならず、それにより過剰に流動し、国内にだぶついたお金は有望な投資先(不動産や株式などに対する投機)を求めて国内を亡霊のように彷徨い続けることになり、結果資産バブルを引き起こしてしまいます。
簡単に言えば、どこかで、余ったお金を外貨の形に変えて逃がしてやらないと、政府のマクロ経済コントロールは破綻してしまいます。
それが、いま中国政府の海外資源投資戦略や海外の資産に投資する外貨投資政策会社設立となってあらわれています。 また、規制の多かった個人でもなるべく外貨を持たせ、海外の市場や債券に投資させ、人民元の印刷と流通を押さえ、市中に出回るお金を政府が銀行などを通じて吸い上げて、過剰流動性を押さえに掛かっているところです。

こうした流れの中で、いずれ人民元の自由化やA株市場の開放も進んでゆくことになるでしょうね。
ちょっと、最後は一般的な経済の話になってしまいましたが...。

[コメント]②
Kさん解説ありがとうございました。

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投資される資金の50%迄を海外の株式で、残りを海外債券などの固定利回り商品で運用することを義務づけています。
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ということなので、やはり直接投資の方が魅力ある人にとっては魅力的なものとなるのでしょうね。(当たり前ですね。)

直接投資できる人々の投資金額がどれくらい見込めるのか難しいところではあると思いますけど、それを見越した海外の資金もかなり流入するんでしょうね。(大した金額ではないですけど、わたしもその1人ですね。)

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中国政府にしても、膨大な外貨準備高に見られるように、貿易黒字や海外からの投資による外貨の過剰な流入を放置し、国内に溜め込むばかりであれば、いずれその裏付けとしてそれに見合った人民元を大量に印刷し続けなければならず、それにより過剰に流動し、国内にだぶついたお金は有望な投資先(不動産や株式などに対する投機)を求めて国内を亡霊のように彷徨い続けることになり、結果資産バブルを引き起こしてしまいます。
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そういうことで国内のお金がだぶつくのですね。知りませんでした。
まだまだ、勉強不足ですが、これからもよろしくお願いします。

 

注)この記事は、過去のものからの再録の形で転載させていただいております。時事的に古い話題が取り上げられていますが、内容的には時間の風雪にも耐えられるものと思い、取り上げさせていただいております。

また、記事にコメントやコメントに対する私からの返答が付属されているものもあります。 

2013/01/26