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中国名言と株式紀行(小林 章)

第31回 四000年を学ぶ中国名言/「代金回収のスペシャリストの出番」

『未だ一簣を為さずして、止むはわが止むなり(未為一簣、止吾止也)』
                                   出典【『論語』子罕篇】
[要旨]本人が最後まで努力を継続できるかどうかで、成功と失敗が決まることの喩え。
「一簣(き)」とは、縄を網状に編んで四隅に綱を付けた土石運搬用の簡単な道具(モッコ)で、一盛分の土砂のこと。孔子は学業成就や徳の修行を山に喩えて、「あとモッコ1盛分の土砂を盛れば山が出来上がるところまで来ているのに、そこで諦めてしまっては、今までの努力が水泡に帰してしまう。もしそこで止めたら、それは本人自身の責任だ」という意味のことを言っています。

学問にしろ、徳行にしろ、商売にしろ、仕事にしろ、どこが「最後の一簣」、すなわち到達点なのかは、判断の難しい面があります。とすると、発心して学業に励み、或いは事業と成し、成果が得られる前にはここが常に「最後の一簣」と思いなして、諦めず、手を抜かず、努力を惜しまないことが悲願成就の大道だということになります。

営業のクロージング手法に、最終的に購買の決断を交渉相手に迫る段階があります。購入担当者も最後の最後で、迷いを生じてしまうことがよくあるのです。特に大型設備などでは、その商品導入が担当者として賞賛に値するか、非難の対象とならないかどうか、不安がよぎるわけです。自らに報酬をもたらすのか、罰則の対象となりはしまいか、悩ましいのです。
「最後の一簣」で成功裏に終わり、賞賛されれば良し。期待を上回る価値や具体的な賞賛されるイメージを担当者に再認識させ、周囲の安堵を呼ぶ道筋を示してあげることで、営業者と担当者双方にウイン・ウインの関係が築けると考えます。

我が中国工場では、製造設備導入や作業場手直し改修工事、電源設備の増設工事、外壁塗装工事など、様々な委託契約を行いましたが、これらには中国独特の契約慣習があります。
先ず、契約時に30-50%の前金の支払いが発生します。前金の支払いによって請負業者は材料購入や職人手配を開始します。前金の受け渡しがなければ、そもそも工事に掛からないわけです。また、半分程度の契約工期が完了した段階で、残金の支払いが成され、再び資材購入など工事の再開が行われますが、例外なく残金の10-15%は工事完成後に支払うことにしておきます。この10-15%の工事等残金を巡って必ず問題が発生します。委託者から受託者に残金の支払いを実施すべきかどうか、紛争となることが多いのです。

従って、残金が払われないことを予め見越して、85-90%の工事費や設備代金で元が取れるように受託業者は契約金額の調整を行っています。残金が取れればモッケ物、仮に取れなくとも一定の利益は確保できるように計らうのです。
この受託工事等残金の10-15%は、いわば「最後の一簣」ですが、これが無くてもよいように計算尽くな訳です。「最後の一簣」が、受託工事での利益部分ではダメなのです。どうしてそうなるのか?

中国では、商品販売や役務契約において、常に問題となるのが入金(代金回収)です。これが出来て始めて、一つの商行為が完了しますが、こちらの「最後の一簣」も本当に難しく、何だかんだと難癖を付けて、代金の支払いを渋ります。中国の代金回収のスペシャリストは、大抵その代金の半分が報酬と決まっています。報酬額が少々良すぎるように思われます。その程度の報酬を払ってでも相手から代金が回収できれば、その残代金はまるまる受託会社のお釣り(=期待外)利益だからです。
                         16「代金回収のスペシャリストの出番」

注)この名言は、邱永漢監修『四000年を学ぶ中国名言読本』(講談社)より抜粋させていただいております。 

2012/12/31