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酒の道、食の道(金城拓)

第10回 書籍紹介 「世界一旨い日本酒 熟成と燗で飲る本物の酒」

このサイトにこられる人なら、
ご存知の方も多いでしょう。、
つい先ごろまで戸田先生もコラムを連載されていた、
ハイハイQさんQさんデスにて、現在、
「私のスーパーグルメ術」を連載中の
古川修先生の著書です。

この本には、現在の日本酒を取り巻く環境、
その原因となる戦中、戦後の日本酒に関する流れや、
そこから日本酒が誤解されていく過程が書かれています。

米不足からくるアルコール添加による水増し。
水増しにより薄まった味を補う調味液添加。
そして物が豊かになったにも拘らず、
いまだに日本酒の大半はこのようなお酒であり、
残りの吟醸酒などの特定名称酒においても、
考え方の主流は、香りが高い酒がよい酒であり、
劣化を防ぐためには5度で保管し、
新鮮なうちに飲むのがよい、というものです。

そうではなく、常温で熟成して、燗をした状態が
日本酒が一番旨い状態であり、
それに耐えられるのは、造りのしっかりした酒だけである、
との考え方がテーマとして最初から最後まで貫かれています。

その観点から、それらの"旨い酒"を造る蔵元、
"旨い酒"が飲める居酒屋、料理屋、
そして、毎日の晩酌として適している"旨い酒"の
具体的な銘柄が紹介されています。

この本における最大の読みどころは
旨い酒を飲む(飲ませる)ことに情熱を書けた人々の
熱いドラマでしょう。
蔵元の数だけドラマがあり、それを人々に伝えるための、
小売店、居酒屋のドラマがあります。

日本酒の特徴のひとつに、
生産者の顔が見える、というのがあります。
缶ビールを造っている人が誰だかはわかりませんが、
ちゃんとした蔵元の造るちゃんとした日本酒であれば、
杜氏さんの名前はラベルに記載されています。

日本酒は作り手の顔を浮かべ、
その情熱やドラマに思いを馳せながら飲むことが出来る、
お酒なのです。

本書を読んで特定の蔵元や銘柄に興味が出たら、
お勧めされている居酒屋、料理屋に出向き、
興味のある酒を頼みながら、
その裏側にあるドラマに思いを馳せつつ、
お酒を楽しんでみてください。
豊かなひと時を味わうことが出来るでしょう。

2005/10/04