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小さなビジネスパーソンの小さな話(門間啓)

第58回 いつも開いている

Tさんは商家のご隠居さん。
自分が知り合ったころのTさんは
好々爺然とした、穏やかなおじいちゃま。
しかし、現役のころはかなり
頑固なワンマン社長だったそうで、
古い社員さん達からいまだにおそれられていました。

そんなTさんから聞いた話。
「僕がもう少し若くて、
まだお店をやっていたころね、
まだ外は明るかったけど
汗を流したくてちょっと銭湯に行ったの。
店は店のものにまかせてね。

そしたら、近所のじいさんに
『商人が昼間っから風呂になんぞ入って
どういうつもりだ!!
お客様に失礼じゃないか。
とっとと店に戻って仕事せんか〜!!』
と怒鳴られてね。

まいったな〜、と思いながら
あわてて店に戻ったよ。」

「お店はね、勝手な都合で
やってたりやってなかったりすると
お客様に大変迷惑をかけるし
信用していただけない。

いつでも決まった時間に開いて、
決まった時間までやっている、
それが大事なんだね。

今日は暇でお客さん来ないから
早く仕舞っちゃおうか、なんて
いつもより早く閉めてしまって
そのあとに1人でもお客様が
みえたら申し訳ない。

ひまだろうが、雨が降ろうが槍が降ろうが
お客様がいらっしゃったら
いつも開いている、というのが
大切なんだよ。」

Tさんが現役のころは
日曜日と1月1日だけが商売やさんの
休むときで、それ以外の日に休業するなんて
考えられなかったそうです。

学生生活とサラリーマン生活しか
経験した事のない自分は
祝日の多い月など「やった!休みがおおい♪」
と喜ぶばかりですが、
Tさんにかかると
「こまったねぇ。
今月は17日しか営業できないねぇ。
土曜日も休みだし、
こんなに休みばっかりじゃ、
仕事にならないねぇ。」
と新鮮なことを言ってくれるので
脳みそがモミモミされるようで、
もっとお話を伺いたい、と思うのでした。

2005/10/20