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小さなビジネスパーソンの小さな話(門間啓)

第168回 故事10 遼東の豕

『遼東の豕』(りょうとうのいのこ)
遼東で珍しく白い頭の豚が生まれたので
天子に献上するために河東へ行ったら
河東の豚はみな白い豚だった故事から、
つまらぬものを自分だけで良いと思う意。
独りよがり。(范曄『後漢書』)

国際都市・香港に住んで日本を見ると
自分を含め多くの日本人の
外国語スキルの乏しさが目に付きます。

もちろん、日本に住む日本人にも
外国語に堪能な人がいることはいるけど
まだ多数派ではないですよね。
外国語がしゃべれる人は
「え〜、すごーい。ペラペラだね!」とか
2〜3ヶ国語使える人は
なんだか特殊技能扱いです。

駅前留学とかお金も時間もいっぱいかけて
外国語の習得に一億総心血を注いでいる!?
かのように見える状況です。

英語ができれば就職に有利、とか。
これからは中国語ができなきゃ、とか。

でもね。
一歩日本から足を踏み出せば
5ヶ国語くらいしゃべれる人
いっぱいいっぱいいます。

父はアフリカ人、母はイタリア人、
スイス育ちだけど、大学はイギリスで、
今は中国語を勉強してる、
こんな人がいっぱいいっぱいいます。

日本が経済大国だった(微妙に過去形)から
「東京に3年住んでたよ」
「よく出張で大阪に行っていたな」
と片言の日本語を話す人も少なくありません。
かつて日本に駐在していた人が
いまは香港を拠点に
中華圏に駐在しているというのも
なにか象徴的ですが。。。

外国語の習得に力を注いじゃ
イケナイと言っているのではないです。
外国語スキルはそれはそれで必要なんですが、
できたからどうだというものではないんです。
ホッチキスや修正液が使えるからと言って
特技といえないように。
いくらがんばっても、世界中には
日本語もできて他の言葉もできる人
いっぱいいっぱいいるわけです。

そんな中で。
わたしたちは外国語ができることを
錦の御旗みたいに考えちゃいけないと思います。
白い豚が珍しいと思っているのは
白い豚がいない地域に住んでいる人だけです。

日本人は侵略されたり植民地化されたり
という歴史的下地のない、
比較的平和な島国だったから
外国語習得のDNAが
退化しちゃったのかもしれません。
そのかわり、違う能力に長けているはずです。

外国語の習得が
死活問題だった歴史を持つ地域の人々が、
その能力に長けていることは
うらやましいような気もするけれど
ある意味、かなしいことかもしれませんね。

2006/02/07