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小さなビジネスパーソンの小さな話(門間啓)

第167回 故事9 仁義有るのみ

孟子が君主に、
「王何ぞ必ずしも利と曰わん。亦仁義有るのみ。」
と説いて、利益ばかりを追求する姿勢を
批判しています。もし、君主を先頭にして、
だれもが利益第一主義に走ったら、
国家は危くなり、君主自身が家臣に何もかも
奪われることにもなりますよ、と警告しています。

本当にそうなんですよね。

以前、4年ほど勤めていた会社が
月一回の社員会のとき、いつも社長が
『営業』『売り上げ』『利益』
のこと口をすっぱくして言っていたんです。
目標に達しないとこんなまずいことになる、
がんばらないとこんな大変なことになる、
ってことを毎回(苦笑)。

もちろん、社長さんはそういうことを考えて
いなきゃいけないでしょう、当然です。

でもね、社員はついていけなくなっちゃうんです。

「会社に利益上げるためのコマとして
使い捨てされる存在なのかな」労働時間長いと
そんな思いがよぎってがんばれなくなります。

「営業成績上げなきゃいけないけど
お客様に無駄な出費をさせちゃうんじゃないか」
なんて葛藤しちゃったりします。

『利益』『売り上げ』で労力を取られるから
顧客サービスや品質管理がおろそかになり勝ち、
それを維持向上させようと思ったら
正規の勤務時間外で何とかしなければなりません。
なんとかならない社員もいっぱいいました。

そうじゃなくて、もし
「うちの商品はこんなにいいのだから
知らない方がいたら気の毒だから
たくさんの方に良さを知っていただこう」
「お客様にもっと喜んでいただくため
心をこめて品質を良くしていこう」
「力をあわせて会社を成長させて
自分たちもお客様も誇りを持てるような組織にしよう」
こんなことを言ってもらえたら
会社に対する忠誠心も向上するし
充実感を持って働ける人も多かったと思います。

ただ、社長が「利益利益」言っていたおかげで
社員のほうも自分の利益を考えるようになった
のでしょうか、得るものの少ない会社を捨てて
他社に転職する人が多かったです。
結局、他社で買値がつかないような社員ばかりが
最後に残り、その会社は解散しました。

孟子が言うように、
トップに立つ人は利益よりも仁義を説いて欲しい。

※勧めてくれる人があって
故事をひもといています。
心に浮かんだことを書き留めていますが
浅学のため解釈がおかしいところが
あるかもしれません。
お気づきの点はご助言いただければ幸いですm(__)m

2006/02/06