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夢の上海(チャイひめ)

第7回 もう一つの名刺入れ

春節の連休は上海市内で過ごしました。
よい機会なので、上海セミナーでお会いしたみなさんに会いたいと思い、
呼びかけたら、7名もお集まりいただき、皆で円卓を囲みました。

私の選んだお店や料理に満足していただけたようで、一安心しながらも、
中国へ来たばかりのころに、思いを馳せていました。

日系企業には、当然ながら日本から出張にやって来る人が多くいます。
中国事情にも詳しく、海外出張に慣れてらっしゃる方もいるでしょうが、
たいていは言葉や食事に不安を抱えての出張になります。
私たちにとって、出張者の受け入れは大事な仕事の一つなのです。

中国各地にはおいしい日本料理屋さんもたくさんありますが、
中国に来たからには中華を食べたいという人がほとんどですし、
私としても是非、おいしい中華を食べて帰って欲しいとも思います。

そこで、皆で中華を食べに行くわけですが、
お店を選ぶのも、お料理を注文するのも、全て私の仕事でした。
私の会社が中国に駐在員事務所を開いてからしばらくは、
事務所に私一人だったので、当然の話ですし、
中国語の分からない出張者は、私にまかせっきりです。

短期留学の経験もあり、独学で中国語の勉強をしていたとはいえ、
中国へ来たばかりのころの私には、実践会話はおぼつかず、
中華料理に詳しくないので、メニューを見てもどんな料理か分かりません。
特に難しいのは海鮮料理のオーダーで、大きなレストランへ行くと
イケスで泳いでいる中から、魚と料理方法を指定するのですが、
どんな魚で、どんな調理方法がおいしいのかさっぱり検討もつきません。

また、どうしても外国人にはなじみにくい中華料理の味もあります。
現地の味に慣れた私がおいしいと思っても、
お客様がおいしいと思ってくれるかというのは別の話です。

オーダーした料理が多すぎたり少なすぎたり、
お客様の口にあわないものばかりオーダーしてしまったり、
「こういうものが食べたい」というお客様の要求を
ウェイトレスに上手く伝えられなかったり・・・失敗はたくさんありました。

中でも「九龍酔蝦」という料理を頼んだときのことは忘れられません。
九龍とはそのお店の名前、つまりお店の特色料理ということです。
お店の名前を料理につけるほどの料理はたいていおいしいということが
経験としてあったのと、エビなら無難だろうと思ったのですが・・・。

出てきたのは、強いお酒の入った小鉢にエビが生きたまま入れられ
ピチピチ、バタバタ暴れまわっているという料理でした。
白魚の踊り食いのように、エビを生きたまま食べるのです。
小さければまだマシなのですが、これが結構大きい!!
サクラエビを一回りも二回りも大きくしたようなエビでした。
ちょっとグロテスク・・・。

こういった料理は、好きな人は好きなのでしょうが、
このときはお客様も含めて場の全員が食べることができず、
お料理は結局、下げてもらいました。
あとで私が上司に怒られたのは言うまでもありません。
ちなみに「酔蝦」というのは、こういうエビの食べ方です。

現地に住んで現地で働いている人にとって、
食事の注文は大事な仕事であり、ビジネスマナーともいえるべきことだと
やっと気づいた私は、勉強を開始しました。
もう一つの名刺入れを持ち、おいしい料理屋さんの名刺を集めるように。
おいしい料理やお酒に出会ったときは、すかさず名前をチェック。

また、メニューから料理が分からなければ、聞けばよいことです。
どんな味ですか?辛いですか?油っぽいですか?
お店のオススメ料理は?よくオーダーされる料理は?
今オーダーした品数で全員がお腹いっぱいになりそうですか?
食事の席で使う中国語を必死で覚えました。

こうして、やっと食事の注文が一人前にできるようになったところです。
もう一つの名刺入れは、公私ともに大活躍しています。

ですが、私の選んだお店とお料理に満足していただいているか、
内心ビクビクしながら、お客様の様子を伺う癖だけは直りそうもありません。


チャイひめALBUMより〜結婚式〜

チャイひめALBUMより〜結婚式〜

春節中にあるレストランへ行ったところ、大広間では結婚式をしていました。人が集まりやすい春節中に結婚式を挙げるカップルが多いのです。写真は新郎新婦さんによるシャンパンタワーです。

2006/02/05