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散歩しながら(ぼうちゃん)

第90回 教えてください

わたしは学びたいのです。
先生、どうか教えてください。

たったこれだけの言葉。
これが学力というものだそうです。

このセンテンスを素直に、はっきりと口に出せる人は、
もうその段階で学力のある人であり

自分は学ばなければならないという
自分の無知についての痛切な自覚がある人なんですね。


小中高学校の時代に
人生の師にあたる先生に巡り会った人を
私はうらやましく思いますが

今思い返すと優秀な子、学力のある子は
積極的に先生に近づいていった気がします。


高校生のときのこと
友人のk君があの先生はすごいから

今度一緒に先生の自宅に行ってみないかと誘われ
気乗りはしなかったが
誘われるままに付いて行ったことがあります。


生物の先生でしたが
居間の本箱には難しそうな本がたくさん並んでいて

友人はその中の一冊を取り出し
この本は前に読みましたが歯が立ちませんでした
と言うと先生は満足そうに頷いていました。

私は何を喋ることも出来ず
ただ黙って先生の話を聞いていただけですが

的確な質問し先生を笑わせたりしている
k君をただただ感心しているばかりでした。


その後k君がこのときの生物の先生を
生涯の師として仰いだという話は聞きませんが

おそらく若い頃に自分の先生を見つけただろうと思います。

わたしは学びたいのです。
先生、どうか教えてください。
たったこれだけの言葉ですが

友人は素直に自分の言いたいことをきちんと伝えられるのに
私ときたら言いよどみ、口ごもり
また自分の無知を恥じました。

 

ある知人がむかし
会社に就職したくて世話を頼みに
年取った先輩を訪ねたそうです。

その後すぐに経過を尋ねるのも失礼かと考え
しばらくたってその先輩を訪ねて
先日お願いの件はどうなっているでしょうかというと、

先輩は
頼むだけ頼んで
あとはナシのつぶてとはどういうことだ、

人は本人が思うほど
思ってはいないんだと怒ったそうです。


怒られたのは尤もなことで至極納得したが
それよりも

歳をとると若い者がたびたび訪ねて来るのは
うるさいし面倒なことだけれど

本心は満更ではなく
うれしいものなのかと悟ったそうです。

 

この話をきくと
わたしなどは同じように怒られるクチかなと思いました。

気が利く、というのは
こんな時相手の気持ちを汲み取り

同時に相手が喜んでくれるような
行動をすばやく起こす人なのだろうと思います。

うるさがられても遠慮などしないで
懐に飛び込んでいかにも
頼りにしているということをさらけ出してしまう。


少年時代の友人k君ならこんなときどうしたろうか。

あの人懐っこい笑顔と
素直な態度できっと相手の懐に
すっと入ってしまうのだろうな。

 

私を可愛がってくれた叔父の晩年
疎遠になってなかなか訪ねたりしなかったけれど

一升瓶提げて顔をだしてみようかと思っても、
叔父はとっくに死んじゃって
もういない。

2011/11/05