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散歩しながら(ぼうちゃん)

第23回 女優高峰秀子

「私が一番嫌いなのは映画界のパーティーだ」
 
なんておよそ女優らしくないことを
言っていた大女優は
 
「死者は生者をわずらわすべからず」、
 
そのモットー通り、
 「 高峰秀子」 の幕を下ろしました。

 

 私も映画はもちろんですが
彼女のエッセイの面白さに魅了されたクチです。
 
 
つづりかた巴里。にんげんのおへそ。
にんげんの住所録。人情噺松太郎。
私の梅原龍三郎。おいしい人間。
 
みな良かったですがやはり
 高峰秀子『わたしの渡世日記』
この自伝はすごいですね。
 
頑固で、屈託がなく、
高峰さんの人間を見る目はきびしい。
文章に滋味があり一級の自伝だと思います。

他人を書くときにその人の心の中に鋭く食いこんでいき、

自分を書くときにはみごとに自分を突きはなしています。

高峰秀子がタダモノでないとわかるのは、
一流の人がいったん高峰秀子に惚れると、
たまらなくなるみたいです。
 
東海林太郎、梅原龍三郎や小津安二郎、
成瀬巳喜男、木下恵介
川口松太郎のようなお歴々が偏愛しています。
 

 また私の好きな杉村春子を
背中でもセリフを喋れる名人
と言って尊敬しています。
 
好きな人がもうひとりの好きな人のことを
好意的に見てくれると嬉しくなってしまいますが
杉村春子のこともそういうことです。
 
 
私は山田風太郎が好きで
よく読みますが山田さんも
高峰秀子のフアンだと知って
 嬉しくなります。
 
 
人間臨終図鑑という本がありますが、
山田風太郎さんが生きていたら
どんなふうに書いてくれたろうな、とおもいます。

山田風太郎さんは高峰秀子のフアンで
対談の話があったけど断ったそうです。
 
おばあちゃんになっても素敵な人はいるけれど
山田さんは嫌だったのでしょうかね。

黒澤明の全盛期に
平家物語を撮ってもらいたかった、
と言ったのも山田風太郎なんです。
 
 
私の母親と同い年の女優に
こんなに入れあげるとはアホみたいですが
 
スクリ-ンの魔力ですね。

ところで、高峰秀子、邱永漢、私の母親は同い年です。
 

尚、このコラムは
もしもしQさんの右隣りに連載している

コラム食べる歓びのJCオカザワさんに
1月14日に紹介されました。

文中のM塩は私です。

2011/02/26