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散歩しながら(ぼうちゃん)

第111回 アンテナ

雪が気持ちよさそうに降った朝、
手紙を書いた。

手短に済ませて、
雪のことは書かずに出したら返事が来た。

「雪であなたはどんな気分でしょうか?
くらいのことも書けない、

気の利かないお人の
お願いなんて聞く耳を持ちません。
本当につまらない男ですこと」

と書いてあった。

読み返して感動し、鳥肌が立った。

もう死んだ人だから、こんなことさえも大切な想い出だ。


これは
徒然草にある話だけれど
いつも雪が降ると思い出します。

ああ、俺もこの男のように
気の利かない奴だったろうなあ。

しかし、こんな手紙の返事をよこす
おなごというのはじつに
いい女だろうと想像するのです。


機微に触れるというのですか。
表面では捉えられないもの。

相手の気を逸らさない
相手の気分をよくするそのポイントを

押さえる才能というものは
成長しながら身につけていくものでしょうが

生まれつきそれの長けている人がいます。

男女の仲だけでなく
仕事においてその才能がものをいいます。

目には見えないものにたいする
アンテナの質ですかね。


アンテナの性能がよければ

世の中の流れ、お金の流れという
大きな潮流が読めてくるのでしょう。

とすると
俺は、相変わらず読めていない。

2012/02/09